声明・アピール・決議
社会保障制度の充実を求める決議

  1.  政府の新自由主義的政策によって格差と貧困が拡がったいまの日本の社会において、市民による「反貧困」の取り組みが野火のように広がり、「貧困」の問題が広く認知され、かつ、それが克服すべき課題であるとの認識が共有化されつつある。「反貧困」の取り組みの結果として、たとえば生活保護の分野において、かつてはほとんどが窓口で追い返されていた稼働年齢層の生活保護申請が劇的に変化するなどの成果も上げている。

  2.  では、果たして、世の中から「貧困」が無くなっただろうか。決してそうではない。「貧困」をなくすためには、「貧困」に陥った人に対する個別の救済だけでは足りない。「貧困」を生み出している社会の仕組みそのものを変革しなければ、抜本的に「貧困」をなくすことはできない。貧困に陥ってしまったケースを個別に救済する取り組みにとどまらず、そもそも貧困を生み出さないような社会の仕組みを構築していかなければならない。

  3.  貧困をなくし、すべての人が未来に希望を持ち、かつ、安心して暮らしてゆける社会にするためには、ディーセントワークの確立によって労働分配を高めるとともに、富の再分配を行う仕組みである社会保障制度の充実が不可欠である。生活保護制度の充実はもちろん、労働に関わる雇用保険制度・職業訓練制度の充実、その他、保育・教育・医療・介護・住宅など人生の各ステージにおける必要な社会保障給付がすべての市民に対してあまねく保障されなければならない。

  4.  ところが、現政府は社会保障制度の充実を口にしながらも、実際にはこれと逆行するかのような動きもみせている。例えば、保育の分野では、「子ども・子育て新システム」の名のもと、保育・幼児教育の市場化を進めようとしている。このシステムは、時間単位の保育サービスを親が「金で買う」というもので、親の経済力によって保育の質や量が規定されてしまう仕組みとなっている。低賃金・長時間労働を強いられる親ほど、より多くサービスを買うことになり、より貧困になってしまうのである。このような制度は、かえって貧富の格差を広げていくおそれがあるから、断固として反対する。どのような境遇にある子どもも、質の高い十分な保育が受けられるべきである。

  5.  民主法律協会は、政府及び全ての国会議員に対し、すべての人が未来に希望を持ち、かつ、安心して暮らしてゆける社会にするために、社会保障制度の充実を求める。また、そのために、労働組合その他広範な団体・市民と連帯し、取り組みを強める決意を表明する。

2011年2月6日
民主法律協会
 2011年権利討論集会参加者一同
   
 
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