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憲法の趣旨に沿った労働者性判断基準の確立を求める決議 |
- 労組法上の労働者性が争点となっている新国立劇場事件、INAXメンテナンス事件について、最高裁判所は、口頭弁論期日を開く決定を行い、前者については3月15日、後者については3月29日に弁論が行われることとなった。
同一の争点で、現在、最高裁に係属中のビクターサービスエンジニアリング事件でも、今後、弁論が開かれるはずである。
- これらの事件は、いずれも、労働者と就労実態において違いがないのに、個人請負(委託)業者という扱いで働くことを余儀なくされている就労者が、一方的に報酬を切り下げられたり、契約を解除されたりする中で、労働組合を結成・加入し、就労条件の改善を求めたという事例である。
これらの事案について、都道府県の労働委員会、中央労働委員会は、就労者の置かれた実態に即して、労組法上の「労働者」性を認め、その団結権を保護する命令を発していたが、近時、東京地裁・東京高裁は、次々と中労委の判断を覆し、就労者の労働者性を否定する判断を行ってきた(INAX事件東京地裁判決は中労委の結論を支持したが、判断枠組みは他の裁判例と同類のものであった)。
今回の最高裁の決定は、これらの下級審の判断を見直す可能性を示すものであり、大いに歓迎すべきものである。
- 昨今、形式的な請負契約や委託契約を締結することにより、労働者を保護する法の規制を免れようとする事業者が増え、また、これを就労者の多様な働き方などと言って持ち上げる論調も生まれている。
しかしながら、憲法が勤労者に労働基本権を保障している趣旨は、労働者個人と使用者との間には経済的な従属関係があって、労働者は使用者の決めた契約内容に従わざるを得ない立場にあり、その状況を放置すれば労働者の人権が侵害されるからに他ならない。
したがって、「労働者」性判断においては、形式にはとらわれず、就労者がこのような立場に置かれているか否かを、実質的・客観的にその実態に即して判断することが求められているというべきであり、形式に拘泥し、就労者の生活実態・就労実態を顧みなかった近時の裁判例が破棄されるのは当然のことといえる。
最高裁においては、このような誤りを是正するとともに、憲法の趣旨に従った団結権保障が実現される判断基準を示すことが求められている。
- 民主法律協会は、今回の最高裁の決定を受け、全国の労働組合・労働法研究者・労働弁護士等と連帯して、各個別事件の支援を強化するとともに、「名ばかり事業主」とされる就労者の労働基本権確立のためにたたかう決意を表明する。
2011年2月6日
民主法律協会
2011年権利討論集会参加者一同
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