2009年に政権交代を果たした民主党が政策の目玉に掲げた労働者派遣法改正は、数多くの労働者の切実な願いにもかかわらず、1年以上、棚晒しの状態となっていた。最近、民主党は、自民党、公明党とともに、派遣法改正案を大幅に修正し、製造業派遣と登録型派遣の原則禁止規定を削除し、違法派遣があった場合、派遣先が労働者に雇用を申し込んだと見なす「みなし雇用」制の導入は3年後まで延期するという、まさに骨抜きの法案とする三党合意を交わしたと報道されている。
派遣法改正の議論は、派遣では雇用が極めて不安定であることを受け、派遣労働者の雇用の安定を図り、その生活基盤を支えることを目指してとして行われてきた。ところが、製造業派遣と登録型派遣の原則禁止規定がなくなれば、派遣労働者の不安定な雇用に歯止めをかけることが困難となり、大量の雇い止めの発生を防ぐことが難しくなる。それでは2008年以降の議論が水泡に帰することとなろう。製造業派遣・登録型派遣禁止規定の撤廃は、派遣法改正の目的を見失った修正案であって、断固反対する。
さらに、派遣法改正案の柱である「みなし雇用」の規定についても、三党合意は、導入を3年も延期しようとしている。現行法40条の4は、派遣期間を超えようとする場合、雇用の申込みを義務付けているが、企業はそれを単なる取り締まり規定と理解し、同条には私法的効力はないとうそぶいて、遵守しようとはしていない。
2008年に大量の派遣切りが発生して以来、民主法律協会は、数多くの派遣切り事件の解決に取り組んできたが、近年、偽装請負や違法派遣で働いてきた労働者が発注元や派遣先に労働契約関係の確認を求める裁判を提起しても、司法判断は厳しいものとなっている。不安定な雇用を強いられ、なおかつ事業主が派遣法違反を行っても許されてしまうという現状のままでは、派遣労働者は安心して働くことができない。その状況を改善するためには、「みなし雇用」制の採用と即時実施という立法的方策が不可欠である。
民主法律協会は、三党合意案によるこれ以上の労働者派遣法の改悪に断固反対し、労働者派遣法の早期抜本改正の実現を強く求める。
2011年11月30日
民主法律協会
会長 萬井 隆令