決議・声明・意見書

決議

労働法制の改悪(解雇の金銭解決制度の導入、裁量労働制の適用対象業務の拡大)に反対する決議

1 厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」は、2022年4月12日、いわゆる解雇の金銭解決制度の導入に向けて青写真を描く内容の報告書を公表した。

同報告書は、同制度の骨格につき、「無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭(「労働契約解消金」)を支払い、当該支払によって労働契約が終了する仕組み」であると述べている。そして、「無効な解雇がなされた労働者の保護を図る観点から、労働者の選択肢を増やすこと」等の観点から検討が行われたとしている。

しかし、現行の解雇紛争も、解雇が無効と解され、かつ、労働者が復職にこだわらない場合は、バックペイや将来分の賃金を考慮し、相当な水準での金銭解決がなされることが多く、本制度は実質的に労働者の選択肢を増やすものではない。また、「解消金」には上下限を設定することとされており、従来よりも低い解決水準が定着するおそれもある。

さらに、使用者側からの申立制度は「今後の検討課題」とされているが、一度労働者申立てのみで制度が導入されれば、たちまち「公平」の観点などを持ち出し、使用者申立ての制度化が強硬に推し進められることは必至である。

経営団体が切望しているのは、たとえ不当な解雇でも一定の解決金を支払えば、有効になるような「解雇の自由化」の実現である。その足掛かりとなる本制度の導入は絶対に阻止しなければならない。労働者の権利を擁護するために真に必要なことは違法・不当な解雇の事前抑制である。

2 労働政策審議会労働条件分科会は、2022年12月27日、「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を公表した。

同報告では、金融機関におけるM&Aの考案・助言業務を、新たに専門業務型裁量労働制の対象とする考えが示された。また、上記分科会では、「適用対象業務の明確化」の名のもとに、2018年の働き方改革関連法案から削除された「裁量的にPDCAを回す業務」や「課題解決型提案営業 」を、立法によらずとも解釈の変更により適用対象とすることが可能であるとする意見が公益委員等から出されている。このような議会制民主主義を無視した姑息な手法による対象拡大は断じて容認することができない。

2021年6月25日に公表された厚生労働省「裁量労働制実態調査」は、対象業務に従事する労働者のうち、裁量労働制が適用されている者は、そうでない者に比べ、過労死ラインを超えるか過労死ラインに近い週55時間以上の労働に従事する割合が明らかに高い(前者は15.7%、後者は9.8%)ことを示した。また、専門業務型裁量労働制の 適用対象労働者の4割が自分のみなし労働時間を知らないという、制度濫用の広がりを示唆する調査結果も示されている。今、真に取り組むべきは、裁量労働制の規制強化である 。

3 民主法律協会は、解雇の金銭解決制度の導入や裁量労働制の拡大などの労働法制改悪の動きに強く反対し、民主主義的プロセスを重視した労働者本位の立法政策の実現に向け、声を上げ続けていくことを宣言する 。

2023年2月18日
民主法律協会2023年権利討論集会

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