1 雇用状況の悪化を防ぎ、雇用の安定のために、政府が果たすべき 責任と役割
新型コロナ ウイ ルスの収束が見通せない中、コロナ禍を理由とする一方的な休業命令による賃金不払いや解雇・雇止め・派遣切りなどが 続いている 。厚生労働省の発表によれば、 コロナ禍の影響による解雇や雇止めは見込みを含めて累計125,000人を超えているが、 実際にはそれ以上の労働者が解雇や雇止めされているものと思われる。
政府は、雇用調整助成金の特例措置を2022年3月末までとしている。 同措置が廃止されると、雇用維持が困難であるとの理由で労働者の解雇等が増加することが予想される。雇用の安定のためには、雇用調整助成金の特例措置の継続が不可欠であり、少なくとも コロナ禍が落ち着くまでの間、同措置を延長すべきである。
また、政府は、雇用保険料率の引き上げを盛り込んだ雇用保険法改定 案を閣議決定し、労働者に雇用保険料の負担増を強いる。政府は、新型コロナウイルスの感染拡大により雇用調整助成金の支給額が膨らみ、不足した雇用保険の財源を補うためだと説明する。 しかし、雇用保険の財源には労使が負担する保険料だけではなく国庫負担もあり、 政府はその割合を減らし続けてきた。国庫負担割合を回復させて、政府が責任と役割を果たせば、コロナ禍のもとでの雇用保険料の引き上げは不要である。
雇用状況の悪化が懸念される今こそ、政府が労働者の雇用の安定のために果たすべき責任と役割は重大である 。
2 女性の非正規労働者が苦しむ状況を招いた企業・政府の責任
総務省の労働力調査によれば、非正規労働者は2000万人を上回り、そ の割合は4割近くに達している。コロナ禍においては、非正規労働者 が真っ先に雇止めの対象となるなど、非正規労働者へのしわ寄せは深刻である。とくに、女性の非正規労働者への被害は甚大である。多くの非正規女性が、雇止め、離職、労働時間の大幅な減少などを強いられている。また、自殺対策白書によると、2020年の女性の自殺者数は前年より15.4%増加している。そのうち 、自殺者数の増加が多かった職種は、事務職やサービス職等の従来から非正規雇用として女性が従事していた職種であり、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う労働環境の変化が、自殺増加につながったと指摘されている 。このような事態が生じた原因は 、長年にわたって女性の非正規雇用の増加と格差の拡大を放置してきた企業や政府にあり、その責任は重大である。長期にわたって放置され続けてきた雇用における男女不平等の矛盾が、コロナ禍で噴出している。
非正規労働者全体の労働条件の改善に加えて、非正規で働く女性の困窮に目を向けた新たな支援など、今こそ雇用における男女不平等に正面から向き合い、その解消に向けた根本的な法施策が不可欠である。
3 今こそ政府に政策を転換させる必要があること
政府に今までの政策を転換させ、真の労働者保護のための政策を行い、また、すべての国民に生存権が保障されるように社会保障政策を充実させることを求めていく必要がある。
民主法律協会は、すべての働く者の権利擁護、そして国民の生存権保障のために、運動の最前線に立って奮闘する決意をここに宣言する。
2022年2月19日
民主法律協会第 2022年権利討論集会