現在、新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し、2020年8月21日時点において、世界の感染者数は2200万人を超え、死者数も約80万人となっている。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて4月7日に発令された緊急事態宣言は、5月末に解除され6月から経済活動は再開したものの、コロナ禍を理由に、多数の労働者が一方的な休業命令による賃金不払いや、解雇・雇止め・派遣切りに遭った。厚生労働省の発表によれば、8月14日時点で新型コロナウイルスの影響による「解雇」や「雇い止め」が見込みを含めて4万5千人を超えている。また、フリーランスとして働く者に対しても、契約の解除・キャンセルがなされるなどの事態が相次いでいる。就業者に雇用の喪失や収入の減少など大きな影響が及んでおり、生活に困窮する者も多く、生活保護の受給、生活困窮者自立相談窓口への相談も急増している。
このような状況において、働く者の権利擁護・生活保障のため、企業は使用者としての責任を果たし、政府は、所得保障などの十分な補償を行うべきである。
そもそも、上記のような状況を招いている背景には、利潤追求・コスト削減・雇用責任回避のために、正社員を非正規雇用、あるいは業務委託で代替してきた企業の姿勢や、派遣の対象業務を拡大するなど規制緩和を進め、労働者の権利擁護政策をおろそかにし、さらには社会保障改悪を進めてきた政府の姿勢がある。
このような危機的な状況の中で、ともすれば、この機に乗じて、規制緩和の方にさらに舵を切り、非労働者化政策による雇用責任の回避や、解雇の金銭解決の導入、最低賃金の抑制、均衡均等待遇の骨抜き化などが進められるおそれがある。またテレワークや在宅勤務などの新しい働き方が現れたことを口実に、労働時間規制の緩和や裁量労働制の拡大が狙われることも懸念される。
コロナ禍における現状の補償を求めるだけでなく、今こそ政府に今までの政策を転換させ、真の労働者・就業者保護のための政策を行い、また全ての国民に生存権が保障されるように社会保障政策を充実させるよう求めていく必要がある。
現在、従来の運動に加え、このような権利擁護のための新たな運動の形、新たな取組みが広がりつつある。感染拡大防止のために人が物理的に集まる形での集会の開催が困難な中で、オンライン集会などwebを利用した新たな運動の形が広がり、またコロナ禍の中でもフリーランスによる労働組合の結成や、幅広い団体の共同アクションが進んでいる。
今こそ、全ての働く者の権利擁護、そして国民の生存権保障のため、あらゆる形での、そして、あらゆる団体と連帯した、市民運動を構築する必要がある。労働者、労働組合、弁護士、研究者、市民団体が集う当会は、この運動の最前線に立って、奮闘する決意をここに宣言する。
2020年8月29日
民主法律協会第65回定期総会