大阪維新の会の松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長は,2019年3月中に大阪都構想の制度案をまとめ,秋までの任期中に住民投票を実施することで合意したと伝えられている。
大阪市民は,2015年5月,当時の橋下徹市長が「2度目の機会はない」と繰り返し訴えた住民投票で,明確に大阪都構想を否決した。それからわずか4年後に巨額の税金を支出して再度の住民投票を行うことは,先の住民投票で示された市民の意思を踏みにじるものであり,一片の道理もない。
大阪都構想は,大阪市の財源,権限を大阪都に移し,市民の暮らしを支える現在の市政の仕組みを解体する。府と市という二重構造により地方自治における権力の暴走を抑えようとした権力分立の仕組みも大きく弱体化させ,住民自治の理念を遠ざけるものである。
大阪市が誘致しようとしているカジノは,民間事業者が私的な利潤追求のために賭博場を経営するものである。ギャンブル依存症の防止措置も不十分である。連続した24時間を1日として数える週3日の入場規制では,暦日でみれば最大週6日もカジノを利用できる。カジノ事業者による賭金の貸付もできるようにするといわれ,治安の悪化,マネーロンダリング,青少年の健全育成への悪影響など,さまざまな弊害が懸念される。
また,2025年に大阪万博の開催が予定されているが,開催に伴う公共事業の費用が際限なく膨らみ,市民の暮らしを圧迫することがあってはならない。
大阪都構想は,カジノや万博にかこつけた大型公共事業に巨額の税金を注ぐための布石となるものである。
しかも,今回の都構想では,住民投票で都構想が否決された場合に備え,大阪市を8区に合区する総合区の導入をあらかじめ議決することが企図されている。しかし,総合区でも,身近な行政サービスの窓口が遠くなり,行政サービスに格差が生じるおそれがある。現在の24区の大阪市のままが一番よいという大阪市民の意思を意図的に無視することは許されない。
松井知事と吉村市長は,大阪都構想が思うように進まないことから,ともに辞職のうえ民意を問うことも示唆した。しかし,大阪都構想の実現を強く望むのは大阪維新の会くらいである。任期満了による選挙が秋に予定されているのに,この時期に多額の税金をかけて首長選挙を実施するのは,府市政の私物化もはなはだしい。
私たちは,あらゆる団体と連携し,大阪都構想及び総合区の実現を阻止するための闘いに全力で取り組む決意である。
2019年2月16日
民主法律協会2019年権利討論集会