2018年7月3日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令
2018年6月29日,安倍政権は,自民党,公明党,日本維新の会などの賛成を得て働き方改革推進一括法を強行に成立させた。
同法には47項目もの附帯決議が付されたが,このことは,いかにこの法律に多くの問題があり,この法律の審議が拙速であったかを示すものである。
同法のうち,労働政策総合推進法(旧雇用対策基本法)は,目的規定に労働強化につながる「労働生産性の向上」をとりいれ,労働保護法制としての性格を一変させるものである。
高度プロフェッショナル制度は,一定の労働者を労働時間規制の対象外とすることを認めるが,業務量や納期をコントロールできない労働者について,労働時間規制を全くなくすことは,長時間労働による健康・生命への重大な危険を当該労働者にもたらすものであり,到底容認できない。また,同法は,高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者の年収要件や職種を政省令に委任し,行政の判断だけで対象が拡大できるのであり,国会によるコントロールを放棄するものである。
100時間未満という残業時間の上限規制も,過労死を引き起こすとされている過労死ラインと同じであり,国が,過労死ラインに達する長時間労働を法で許容することになる。
非正規労働者の待遇に関する規定は,「将来にわたっての人材活用の仕組みの違い」による格差を認めており,格差の固定化につながりかねない。一定の手当の格差を違法とした2018年6月1日の最高裁判決よりも後退している。
また,高度プロフェッショナル制度について労働者のニーズがあることの根拠とされていたヒアリングがわずか12名に対してしか行われておらず,しかも,法案作成後になされていたことなど,立法事実の存在に疑問が生じる事態が次々と明らかになった。にもかかわらず,安倍政権は,成果に応じた仕事ができる,自由な時間ができるなどと不合理で説得力のない説明を繰り返すだけであった。
安倍政権は,以上のような問題を覆い隠し,野党,過労死家族の会,労働組合その他多くの国民の声に耳をふさぎ,同法を強行に成立させた。
当協会は,同法の成立に対し強く抗議する。同法を実施するための政省令の制定,同法の職場での適用を許さず,同法の問題点を今後も社会に訴え続け,同法に反対するすべての個人,団体と連携し,同法の廃止を目指すものである。