決議・声明・意見書

決議

憲法違反の安保関連法制(戦争法制)の廃止を求めるとともに、明文改憲による緊急事態条項新設、9条改悪に反対する決議

 今、日本国憲法は、かつてない危機に瀕している。
 政府与党は、昨年9月には、憲法改正手続を経ることなく、わが国のほとんどの憲法学者、弁護士会、労働組合などの各種団体、そして、老若男女を問わず多くの市民の反対の声を押し切り、憲法9条に違反する安保関連法制(戦争法制)を強行可決した。立憲主義や民主主義を無視する暴挙であった。

 そして、安倍首相は、いよいよ、本丸とする明文改憲に狙いを定めている。
 安倍首相は、本年1月12日の衆院予算委員会では、明文改憲を今夏の参院選の争点とする旨言及し、同月15日の参院予算委員会では、「緊急事態条項」の創設を明文改憲の突破口に位置づけた。さらに、安倍首相は、本年2月3、4、5日の衆院予算委員会において、再三にわたり、憲法9条2項を改変する考えを示した。

 「緊急事態条項」とは、戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害などの際に、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限を政府に認めるものである。例えば、2012年4月に発表された自民党の憲法改正草案(以下「自民党草案」)は、内閣総理大臣が緊急事態宣言を発したときは、「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」(自民党草案99条1項)と国会抜きで立法権を行使し、「何人も…国その他公の機関の指示に従わなければならない。」(同3項)など、政府による人権の制限を容認している。さらに「衆議院は解散されないものとし、両議員の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる」(同4項)として、選挙を通じて政権に審判を下す権利を国民から奪う。

 このような規定は、ドイツ・ワイマール憲法下におけるナチスの緊急事態宣言や我が国の明治憲法下における緊急勅令・戒厳令等の例を引くまでもなく、立憲主義・民主主義を破壊し、基本的人権を蹂躙するものであり、到底、受け入れることはできない。被災地5県(岩手、仙台、福島、新潟、兵庫)の弁護士会も、反対声明を出し、「乱用の危険性が高く、災害対策を口実に創設することは許されない」と抗議しているところである。

 また、戦力不保持・交戦権否認を定めた憲法9条2項の改変は、海外で武力行使をすることを正面から認め、戦争法制を追認するものである。日本国民は、政府によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、戦後70年にわたり「戦争をしない国」を造ってきた。9条改憲により世界中で戦争する国に変えることを、我々は許すことはできない。
 
 我々は、歴史に学び、一人一人が戦争法制廃止、緊急事態条項新設、9条改悪断固反対の声を上げていかなければならない。

 民主法律協会は、直ちに憲法違反の戦争法制の廃止を求めるとともに、明文改憲による緊急事態条項の新設、9条改悪に断固反対する。

 

2016年2月13日
民主法律協会 2016年権利討論集会

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