本年6月19日、労働者派遣法「改正」法案が衆議院において自民党と公明党の賛成多数で可決された。同法案は労働者の生活と権利にきわめて重大で深刻な影響を与えるものであるにもかかわらず、国会で十分に審議が尽くされることなく採決が強行されたことに強く抗議する。
同法案では、無期雇用の派遣労働者については派遣先が無期限に利用し続けることができるものとされている。また、有期雇用の派遣労働者については、同じ事業所での継続的な受け入れは3年まで(事業所単位3年ルール)とするものの、労働者の過半数代表から意見聴取さえすれば繰り返し延長可能としつつ、同じ派遣労働者の継続的な受け入れは同一組織単位で3年まで(個人単位3年ルール)とされている。すなわち、派遣先企業にとっては、部署(組織単位)を変更しさえすれば、また、過半数労働組合等から意見を聴取しさえすれば、永続的に派遣労働者を利用しつづけることが可能になる。
このような派遣利用の自由化によって、正社員を雇わずに、派遣労働者で代替する企業の動きが加速することは必至である。労働者にとっては、不安定で、かつ、劣悪な労働条件の地位に永続的に留め置かれる危険が飛躍的に大きくなる。しかも、個人単位3年ルールにより、有期雇用派遣労働者は3年ごとに雇止めされ、その都度、失業と再就職活動を強いられることになる。直接雇用の原則は破棄され、「正社員ゼロ」「一生涯派遣」「労働者の無制約な使い捨て」が促進され、労働者の生活と権利は危機にさらされる。
同法案にはこのようなきわめて重大な問題があるにもかかわらず、衆議院においては十分な審議も経ないままに、与党が数の力に頼んで採決を強行した。
当協会は、同法案の衆議院通過に厳重に抗議するとともに、引き続き、参議院において、十分な審議を行い、労働者の生活と権利を守るために、同法案を廃案にすることを求める。
2015年6月24日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令