日本国憲法は、日本国民が恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、日本の安全と生存を保持しようと決意したと宣言し、その具体化として、第9条は、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めた。そして、歴代政権は、一貫して、集団的自衛権の行使は憲法において禁じられていると解釈してきた。また、自衛隊の海外における活動についても、武力行使およびそれと一体化する活動はできないと解釈してきた。
ところが、安倍内閣は、本年7月1日、閣議決定によってこの憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認するとし、自衛隊の海外における武力行使も武力行使と一体化する活動も容認するとした。
しかし、日本が直接に攻撃の対象となっていないにもかかわらず、他国を助太刀するために自衛隊を海外に派兵するという集団的自衛権の行使は、日本国憲法の恒久平和主義に反し、日本国憲法第9条に明確に違反するものである。
アフガニスタンやイラクでの紛争の長期化、イスラエル・ガザ地区での無差別攻撃、ウクライナでの民間機撃墜など、最近の世界情勢は、武力行使が多数の人々を無差別に傷つけるだけで、問題解決に決してつながらないことを示している。集団的自衛権の行使を容認することは、これらの武力行使に日本が参戦・加担する道をひらくものである。
これと並行して、安倍内閣は、軍事機密保護を主眼とする特定秘密保護法の運用基準等を策定し、同法の施行を強行しようとしている。特定秘密保護法が施行されれば、国際情勢や自衛隊の活動等に関する情報が特定秘密とされて国民から隠され、政府の戦争参加に対して十分な民主的規制を及ぼすことも不可能となってしまう。
憲法は国家権力を規制するために主権者である国民が制定したものであり、国務大臣や国会議員には憲法を尊重し擁護する義務が課せられている。時の内閣が、閣議決定によって、恣意的に憲法解釈を変更することは、憲法尊重擁護義務に違反し、立憲主義をないがしろにするものである。
民主法律協会は、安倍内閣による集団的自衛権容認の閣議決定に強く抗議する。
今後、安倍内閣は、集団的自衛権行使に向けた関連立法を順次行う方針であるが、そのような立法はすべて違憲立法である。民主法律協会は、集団的自衛権行使・自衛隊の活動拡大など、「戦争をする国」につながる立法及び政府の動きを阻止するため、全力を尽くす。
2014年8月30日
民主法律協会 第59回定期総会