厚生労働省職業安定局
派遣・有期労働対策部需給調整事業課 御中
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に関する意見
2012年7月26日
民主法律協会
会長 萬井隆令
意見の要旨
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下、「労働者派遣法」という)施行令の一部を改正する政令案につき、
1 日雇派遣禁止の例外となる業務の範囲が広きに過ぎるものであり、
2 日雇派遣禁止の例外となる場合については定める合理的な理由がなく、
いずれも反対である。
意見の理由
1 日雇派遣禁止の例外となる業務
政令案は、日雇労働禁止の例外として、労働者派遣法35条の3第1項の政令で定める業務として、現行施行令4条各号に掲げる業務(いわゆる政令26業務)のうち、1号、2号、5号ないし13号、16号(建築物又は博覧会場における来訪者の受付又は案内の業務に限る)、17号ないし20号、23号及び25号に掲げる業務と定める。
しかし、政令26業務のうち、5号(事務用機器操作)が全体の4割を占め、8号(ファイリング)、10号(財務処理)、11号(貿易取引文書作成)を含めると全体の3分の2を占めるといわれている。これらの業務が日雇派遣禁止の例外として許容されるならば、例外の方が多く、日雇派遣禁止の趣旨が著しく没却されるといわざるを得ない。
とりわけ、5号及び8号については、専門的な知識、技術、経験もないのに、派遣可能期間制限を僭脱するために、専門業務を偽装することが横行しており、これらを日雇派遣禁止の例外業務として指定することは、期間制限の趣旨をもないがしろにするものというべきである。
以上のとおり、政令案が例外として指定しようとしている業務は広きに過ぎるものであり、このような政令案を制定することには反対である。
2 日雇派遣禁止の例外となる場合
政令案・省令案は、日雇派遣禁止の例外として、労働者派遣法35条の3第1項の政令で定める場合として、①日雇労働者が60歳以上の者である場合、②学生(定時制学生を除く)、③当該労働者又は世帯の年収が500万円以上の者、④いわゆる家計補助者で世帯収入が500万円以上の者と定める。
しかしながら、労働者派遣法35条の3第1項は、「雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合」に続けて、政令で定める場合を規定しているが、政令案・省令案が定める者が、類型的にそれに該当するとはいえず、属人的な事情をもって、日雇い派遣禁止の例外となる「場合」を定めるべき合理性はない。むしろ、これらの者に対して、日雇派遣のような不安定で低賃金の雇用を継続させるのでは不適切である。加えて、労働者の年収を事業者に確認させる保障がなく、安易に脱法的に利用されるおそれが大きい。
以上のとおり、政令案・省令案が例外として定める場合は、改正労働者派遣法が日雇派遣を禁止した趣旨にそぐわず、何ら合理性がないものであって、このような政令案・省令案を制定することには反対である。