1 大阪万博の開幕が目前に迫っている。万博協会は開催に躍起になるものの、開幕目前となった現在も万博は様々な問題に溢れている。万博の開催は、来場者の命や安全を軽視するものであり、大阪の「いのち輝く未来社会」と真摯に向き合うのならば、一刻も早く万博開催を中止すべきである。
2 万博会場の夢洲は、廃棄物や建設残土の最終処分場として整備された埋立地であり、軟弱な地盤の沈下や、汚染された土壌など、地理的な問題も抱えている。さらには、大阪湾に浮かぶ夢洲は、災害等により海上で孤立するリスクがあるものの、万博協会は災害時の一時的な滞在場所として、パビリオンや大屋根(リング)を活用することとしており、来場者は防災用施設のない夢洲に留まらなければならない。災害等により、多数の被災した来場者を救急搬送する必要が生じた場合、孤立した夢洲から、適切な医療機関へ速やかに搬送することは期待できず、被害が拡大するおそれがある。また、2024年3月には土壌から発生したメタンガスに起因する爆発事故が発生したが、上述した廃棄物等による埋立地という土壌の特性上、原因を除去することはできず、再度の爆発事故が起こる危険性は高いままである。かかる重大な災害リスクが残されたままで万博を強行することは、来場者の命と安全を軽視するものと言わざるを得ない。上記のような危険な万博会場に、大阪の子どもたちを招待する事業が教育現場の意見を無視して押し進められている。万博来場者数を増やすために、未来社会の担い手である子どもたちを災害リスクの高い万博会場に動員させるなど言語道断である。万博が強行されたとしても、かかる事業は取りやめるべきである。
3 三菱総合研究所が2024年10月に実施したアンケート調査によると、万博に来場する意向のある人の割合は全国で24%に過ぎず、万博の開催について国民の支持は全く得られていない。その結果、万博チケットは目標売上に届いておらず、赤字となること必至である。万博は、長期間にわたり行われる大規模事業であり、膨大なランニングコストがかかることから、来場者が目標数に達しないと、開催期間中赤字が増加し続けることとなる。赤字の増大をこれ以上広げないためにも、今すぐに中止すべきである。
4 夢洲では、IRカジノ事業を目的としたインフラ整備のために、多額の公費が注ぎ込まれている。万博の開催は、IRカジノ事業の誘致とともに行われており、様々な問題があっても万博を強行するその理由は、結局のところ、IRカジノ事業を実現することにある。そもそも、カジノは刑法で禁じられた賭博にほかならず、IRカジノ事業により、ギャンブル依存症患者が増大するなど新たな社会不安を生み出すことが明らかである。IRカジノ事業を終局的な目的として開催される万博は、決して容認することができない。
5 以上のように、大阪万博は問題に溢れており、開催が直前に迫った現在も、問題は一向に解消されていない。国民に支持されていないばかりか、来場者の身体生命を脅かし、財政を悪化させる要因でしかない大阪万博は、様々な問題を未来に残すものであり、直ちに中止すべきである。
2025年2月15日
民主法律協会2025年権利討論集会