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意見書

大阪府の最低賃金大幅引き上げ、時間額1,500円の早期実現と全国一律最低賃金制度を求める意見書

大阪地方最低賃金審議会 会長 殿

                                                                               2024年7月11日
大阪市北区南森町1-2-25 南森町iSビル7階
民主法律協会
会長 豊川義明

 

大阪府の最低賃金大幅引き上げ、時間額1,500円の早期実現と全国一律最低賃金制度を求める意見書

 

民主法律協会は、平和憲法を擁護し、労働者と勤労者の権利擁護と民主主義の前進を目的として結成された市民団体です。大阪を中心に、法律家(弁護士や学者)と労働者・労働組合、市民団体が手を携えながら活動するという特長を生かし、労働者と市民の権利を擁護するために活動に取り組んでいます。

続く物価高騰により実質賃金は減少を続けており、6月5日に厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査によると、実質賃金は25ヶ月連続で減少し、過去最長となったと報じられています。物価高を上回る賃上げがなされず、労働者の生活は困窮する一方となっています。特に非正規労働者は、物価高騰により深刻な影響を受けています。日本は30年間で非正規労働を拡大し続け、全労働者の約4割を非正規労働者が占めています。非正規労働者の多くが家庭でのケア労働を引き受ける女性であり、男女の賃金格差も看過できない状態が続いています。正社員労働者には長時間労働を押しつける一方、パートなど非正規労働者には低賃金で働かせる構造が広がり、日本で働く労働者の実質賃金の低下に繋がっています。国際比較をみても、先進国の中で直近30年の実質賃金が減少し続けている国は日本のみであり、異常事態と言うべき状態となっています。

一方で、2023年の企業収益は過去最高となっています。大企業の内部留保は2022年度で511.4兆円と過去最高を更新しており、巨額の企業収益が賃金へ行き渡らず、内部留保の積み増しに回されています。大企業には賃金引き上げの余力が十分あるにもかかわらず、2024年春闘では物価高騰を上回る賃上げを達成できていません。日本の全労働者の7割を占める中小企業で働く労働者及び非正規労働者のうち、大半が賃上げを実現できていない状況です。適切な収益の分配がされず、貧富の格差が極端に広がっています。

大阪府の最低賃金は、2023年10月に前年度より41円引き上げられ時給1,064円とされました。しかし、時給1064円で1日8時間、1週40時間働いたとしても年収約221万円にしかならず、物価高騰が続く今日、憲法第25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営むのに足りる額とは到底言えません。日本で普通に働いて生活を営むためには、時給2,000円程度の賃金が保障されることが望ましいと考えられます。時給1,500円以上の最低賃金を保障することは、労働者のくらしのため必要最低限の条件であり早期に実現されなければなりません。

さらに、地域別最低賃金制度は賃金の地域間格差を作り出し、賃金引き上げを抑制する働きをしています。現在、生活にかかる費用に地域間で大きな差異はなく、収入の地域間格差を広げる地域別最賃制度は、労働者を地方から流出させる一因になっていると言えます。他国をみても全国一律の最低賃金制度が主流となっており、最賃制度は全国一律に是正される必要があります。

また、中小企業で働く労働者の賃金を引き上げるためには、中小企業の安定した経営基盤を確保する必要があります。中小企業は物価高騰の影響を大きく受けていますが、大企業のように価格転嫁して収益を維持することが現実として困難な企業も多く、政府による強力な支援や、取引先大企業との公正取引を確立するための法整備が必要です。

当協会は、労働者の権利を擁護する団体として、労働者の長時間労働の問題、非正規労働者や女性労働者の賃金差別問題に取り組んできました。労働の現場では、過酷な長時間労働による過労死や過労自殺、ハラスメントといった深刻な問題が多発しています。その上、長時間働いても実質賃金が低下したまま上がらない状況が続けば、多くの労働者は希望を持って働き続けることができなくなってしまいます。労働者に対して、生活に必要な収入を保障する政策を取らないまま放置することは許されないと言うべきです。

全ての労働者が安心して暮らせるようにするために、賃金の底上げは早急に実行されなければなりません。そのために、中小企業支援策の拡充とともに、大阪府の最低賃金を大幅に引き上げ、時給1,500円に到達させることを強く求めます。

 

 

1、物価上昇を上回る賃上げを実現し、すべての労働者が人たるに値する生活ができるようにするために、大阪府の最低賃金を大幅に引きあげ、生計費原則に基づき早期に1,500円に到達させること。

2、全国・全産業一律最低賃金制を確立すること。

3、最低賃金の大幅引き上げと同時に公契約法の制定、中小企業関連予算の増額、中小企業支援策の強化、公正取引確立のための下請け法等の改正の実行を政府に求めること。

以上

 

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