決議・声明・意見書

決議

2025年大阪・関西万博中止を求める決議

 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとした2025年大阪・関西万博の開催まで420日余りとなったが、同万博の強行は労働者や来場者の命・安全、そして市民の暮らしをないがしろにするものであるため中止すべきである。

 日本国際博覧会協会(万博協会)が、パビリオンの建設が大幅に遅れていることから、建設業界の時間外労働の上限規制を万博に適用しないよう要望したとの報道がなされたことを受けて、当会は、2023年7月28日付「大阪・関西万博における時間外労働の上限規制の適用除外を求める動きに抗議する声明」において労働者の健康や生命を軽視するものであるとして強く抗議した。その後、万博協会は、上限規制の適用除外を求めることは断念したものの、建設が大幅に遅れている現状からすれば、開催までに遅れを取り戻すべく、建設作業員を過酷な長時間労働に追い込み、その生命・健康が危険にさらされることが予想される。

 会場の夢洲は、長年、建設残土や廃棄物の最終処分場として整備された埋立地であり、地盤沈下や土壌汚染といった問題に加え、地震が発生した際には揺れに伴う液状化の危険性も指摘されている。このような安全性に懸念があり災害リスクも極めて高い場所で開催すること自体、来場者やそこで働く労働者の生命・健康をないがしろにするものである。

 万博の会場建設費も国と大阪府・市、経済界で3等分して負担することとされているところ、誘致当初1250億円と試算されていた建設費が2023年11月には1.9倍の2350億円に膨れ上がり、大阪府市の住民をはじめ市民の負担は増すばかりである。物価高が続き、生活に困窮する市民が数多く存在する中で、今なすべきは暮らしを守る政策であり、万博に莫大な公金を投入することは市民の暮らしを軽視するものと言わざるをえない。
さらに、本年1月1日に発生した能登半島地震により未だ多くの人々が寒波の中、避難生活を余儀なくされている中で、政府が行うべきは、能登の市民たちの生活再建のために、資金、物資、人員を支援することであり、復興支援が万博に優先されるべきである。

 そもそも大阪・関西万博の開催は、カジノを含む総合型リゾート(IR)の誘致とともに行われた「日本維新の会」(松井一郎代表(当時大阪府知事))の施策として掲げられたものであり、万博開催や万博における巨額の財政負担は、結局のところ、カジノのために進められたものである。同万博は、「いのち輝く未来社会」と銘打ち、大阪の経済成長に繋がると強調されているが、一部大企業の利潤追求とカジノ誘致を目的としていることが明らかである。

 当会は、労働者や来場者の命・安全、そして市民の暮らしをないがしろにする大阪・関西万博を直ちに中止すること、市民の暮らしの安定や能登の市民の生活再建を優先すべきとの国民の声に真摯に耳を傾け、行政が本来果たすべき役割を全うすることを求めるものである。

 

2024年2月17日
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