郵政民営化にともなう郵便輸送事業関連法人の「整理・見直し」の中で、郵便輸送事業を行う会社を1社化・子会社化するとの方針がとられながら、不当に子会社にされなかったとして、近畿高速郵便・大阪エアメール2社の従業員らの所属する全港湾阪神支部が、@2社に対する不誠実団交、A郵便事業会社・郵便輸送会社に対し団交拒否、B郵便が二社を解散に追い込んだことが不利益取扱いないし支配介入、にそれぞれ該当するとして、救済命令を求めて申し立てていた。大阪府労働委員会は、10月22日、郵便事業会社・郵便輸送会社に対する申立ては却下し、近畿高速・大阪エアメールに対する申立ては棄却する命令を発した(25日交付)。
郵政当局は、OB天下り人事や、唯一の委託先としての取引関係、関連会社間による株式の持合いを通じて、近畿高速郵便・大阪エアメールを支配し、郵政事業のうちの郵便輸送部門として利用してきた。民営化に際して、郵便事業会社は、郵便輸送部門を新設子会社(郵便輸送会社)に担わせることとしたが、そのことは、31社あった郵便輸送部門の関連会社を一本化することにすぎず、各関連会社が担当していた郵便事業を承継し、雇用を承継すべき立場にあった。
しかし、郵便事業会社は、郵便輸送部門の関連会社を郵便輸送会社に一本化するかどうかを選別することとし、15社については子会社化するとしつつ、残る一六社については取引関係を「一般化」(郵便輸送会社との取引比率を50%以下とすること)して、株式の持合いを解消するよう通告した。ところが、近畿高速郵便・大阪エアメールの2社は、自社株式の引き取り手が見つからないとして、解散に追い込まれた挙げ句、雇用さえ引き継がれることはなかった。
@不誠実団交について、このような過程で行われた団体交渉において、2社が、自社株式の引取先を探索することもせず、取引の「一般化」を漫然と受け入れ、従業員の雇用確保に向けた努力を怠り、団体交渉に誠実に対応しなかったかどうかが争われた。しかし、命令では、アリバイづくりのような株式引取先の探索や就労あっせんの要請をもって、2社の対応を免罪した。
また、A・Bについて、命令は、朝日放送事件最高裁判決を援用して、日本郵便事業などの「使用者」性を検討した。命令は、役員や契約関係、株式の持合いなどから密接な関連性を認め、一定の影響力を及ぼし得る立場にあるとしながら、他方で、解散が株主の判断であることや、日常的に経営・労務・業務の点で支配していたとはいえないことなどを指摘し、結論として「使用者」性を否定した。
しかし、郵政当局は、2社の100%委託者であり、いわゆる「ゼロ連結」会社として密接な関係にあった。そのような立場にある委託者が、2社を子会社から除外して、郵便輸送の関連会社としての取扱いをせず、株式持合いの解消と取引「一般化」を要請したのであるから、2社の従業員の雇用を実質的に支配する立場にあったとみるべきである。郵政当局が事業とともに雇用を承継すると判断すれば、2社の従業員の雇用は確保でき、逆の判断をすれば雇用確保は困難になるのである。また、株式持合い解消に助力すれば、郵便輸送会社から受託をすることも可能であり、2社が解散を回避することもできたはずである。これらのことから、2社を支配する郵政当局との間で団体交渉を持つことは、子会社からの除外にともなう2社の従業員の雇用を実質的に確保するために重要な意義を有するといえ、「使用者」性を否定した命令の結論は不当である。少なくとも、団体交渉を門前払いする「拒否」が正当化できるほど、支配が実質的でないといえるのか疑問というべきである。
また、命令は、2社を子会社から除外した理由についての郵政当局の主張の不合理性については、何らふれていない。しかし、理由にもならない理由で子会社化されなかったことは、郵政当局が全港湾阪神支部の活動を嫌悪し、新会社に承継しないとの強固な意思を有していたことの何よりの証拠である。
全港湾阪神支部は、このような不当命令には到底承服できず、ただちに中央労働委員会に再審査を申し立てた。中労委という新たなステージを迎えるが、引き続き、組合員の雇用と生活を守るたたかいへの支援を呼びかけたい。
- (弁護団は、富永俊造、坂田宗彦、梅田章二、谷真介各弁護士と当職である。
中労委から、西川大志弁護士も加入した。)
|