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大阪市の外郭団体が市職員の人事委員会報告に準拠して賃金減額を行った件について、賃金減額を違法とし、差額賃金の支払を命じた例―大阪運輸振興事件―
タイガー魔法瓶が自らの行為を謝罪〜タイガー魔法瓶事件で勝利的和解〜
大阪空襲訴訟 12月8日に提訴しました


大阪市の外郭団体が市職員の人事委員会報告に準拠して賃金減額を行った件について、賃金減額を違法とし、差額賃金の支払を命じた例―大阪運輸振興事件―
弁護士 河 村   学

  1.  本件は、大阪市の監理団体である大阪運輸振興株式会社が、市職員の給与に関する人事委員会報告の支給率に準拠して、大阪運輸振興職員に対して賃金減額を行った事案である。
     この事案について、大阪運輸振興の14名の職員が、賃金減額分の賃金請求を行った。その後、以下のように推移し、今般、最高裁が上告不受理の決定をし、大阪高裁判決が確定したので、この件を報告する。
      大阪地裁判決 2006年3月8日
      大阪高裁判決 2006年12月22日
      最高裁上告不受理決定 2008年11月18日

  2. 事案の概要
    (1) 大阪運輸振興は、大阪市の退職者の雇用確保等のために市が主導して設立された株式会社であり、大阪市が実質的な支配株主で、かつ、会社取締役や役職者は市職員の退職派遣職員とOBで占められている会社である。同社は、大阪市の監理団体とされ、経営に関し大阪市が指導権限を有し、その内容については市議会への報告が義務づけられている。
     大阪運輸振興の当時の従業員は749名であり、多数組合である大阪交通関連企業労働組合(関企労。組合員数685名)と少数組合である大阪市バス労働組合(市バス労組。組合員数12名)があった。原告らは市バス労組組合員である。
    (2) 大阪運輸振興職員の給料は、経歴加算された初任給基準に、年2回一定額の昇給がなされる旨の規定があるのみで、賃金減額の方法や新規採用者以外の賃金が初任給基準により算定されるという規定はなかった。
     同社職員のベースアップについては、大阪市職員の給与についての人事委員会報告の支給率に準拠、連動して増額改定が行われ、1994年からは関企労との間で賃金改定について労使協定も結んできた。なお、原告ら職員は2002年4月1日に入社している。
    (3) このような状況下で、2003年12月頃までには、人事委員会が大阪市に対して基本給の0.14%の増額を勧告した。しかし、大阪市はこれに従わずに賃金減額の方針を打ち出し、これに伴い大阪運輸振興も賃金減額の提案を組合に行った。この提案について関企労とは妥結したものの市バス労組とは妥結に至らず、同社は、関企労と妥結した1.41%について初任給基準を減額改定するとともに、2004年1月1日から全職員に対し賃金減額を行った。
    (4) 本件の争点は、賃金減額の法的根拠の有無である。

  3. 大阪地裁判決
    (1) 1審判決は原告らの敗訴であった。
     1審判決は、まず、在籍職員の賃金改定については、従前の賃金額に一定率を乗じることによって画一的に改定されてきたこと、及び、就業規則の下位規範である初任給基準を改定することにより、その改定された支給率の内容を在籍職員の賃金にも反映させるという労使慣行が存在したと認定した。すなわち初任給基準の改定により在籍職員の給料も増減されるという規範が労使慣行として存在するとしたのである。
     そして、就業規則の不利益変更の要件を充たす場合には、初任給基準の改定により賃金改定を行うことができると判断した。
    (2) その上で、就業規則の不利益変更の要件を充たすか否かの検討をし、財政状況が悪化していること(同社の収益のほとんど全てが大阪市からの受託収入であるから、大阪市が委託費用を減額すれば必然的に同社の収支は悪化する)、原告らが被る不利益は格別大きいものではないこと、多数組合である関企労が本件賃金改定に同意していることなどから、不利益変更の合理性があるとした。
    (3) 月額16万円から17万円の基本給である原告らについて年間で最大5万6000円の減額になるという本件賃金改定について「格別大きな不利益とはいえない」と言い切る裁判官の判断は、労働者の生活実態を全く顧みようとしない極めて不当なものであったが、それ以上に、一方では監理団体であっても大阪市とは別の経営体としながら、他方では大阪市の方針に従った賃金減額については外郭団体の職員は従って当然とする裁判官の根底的な認識に憤りを感じさせる判決であった。

  4. 大阪高裁判決
    (1) 高裁判決は、1審判決を変更し、原告らの賃金請求をほぼ認める判決を行った(但し賞与部分については棄却)。
    (2) 高裁判決は、まず、初任給基準は就業規則の下位規範であるとしながらも、文面上は初任給の額を規定したものとしかみることができないので、この初任給基準が在籍職員の賃金算定の基準額としての規範を有するものか否かについては別途の考慮が必要であるとした。
    (3) その上で、高裁判決は、事実としては、職員の賃金額については画一的取扱いをしてきたこと、改定に当たっては従前の賃金額に一定率を乗じることにより画一的改定が行われてきており、その際同率の初任給基準を改定し、その賃金改定の内容を初任給基準に反映させるという処理が繰り返し行われてきたことを認めた。
     しかしながら、同判決は、その事実から直ちに初任給基準改定により在籍職員の賃金が増減するという規範が確立していたとはいえないとした。
    (4) そして、具体的には、@過去の労使交渉においても就業規則の改定という形で問題が提起されたことはなかったこと、A在籍職員は過去に賃金改定について異議を述べたことはなかったが、それは過去に賃金が減額されたことがなく、初任給基準の記載が職員にとって緊要な問題ではなかったからであること(賃金改定の妥結の結果を初任給基準に反映させていたに過ぎないこと)、B初任給基準が在籍職員の賃金増減の基礎額になるとか、その改定が賃金の増減に連動するなどという趣旨の規範内容について、特段の説明・周知がないこと等の事実があることからすれば、「就業規則及びこれと一体をなすものとしての給与規程・初任給基準は、『成熟した労使慣行』に基づいて上記のような規範内容を含むものであるということはできず、本件給料改定は、就業規則及びこれと一体をなす下位規範の内容を変更したものと評価することはできないというべきである」とした。
     その結果、本件賃金改定は、「判例上許される就業規則の不利益変更という方法によらずに、従業員に不利益に変更したものであり、法律上の正当な根拠に基づくものということはできず、無効である」と結論づけた。

  5. 終わりに
     本件の控訴審判決について、大阪運輸振興が上告受理申し立てをしていたが、これが今般不受理となり、高裁判決が確定した。
     自治体の外郭団体においては、自治体の方針に従った労働条件決定がなされがちであるが、本件判決は、その決定過程について、安易な労使慣行を認めることなく、職員に適用される規定の内容や労使の実態を具体的に検討し、職員に不利な解釈を導かなかった点に意義がある。
     外郭団体職員が、使い勝手のよい労働力として利用される昨今において、法的根拠のない労働条件切り下げは許されないという当たり前のことを、当たり前に実践していくことは最低限必要なことである。

(弁護団は、河村武信、森信雄、河村学、大前治)

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タイガー魔法瓶が自らの行為を謝罪〜タイガー魔法瓶事件で勝利的和解〜
弁護士 四 方 久 寛

  1. はじめに
     タイガー魔法瓶で勤務していた派遣労働者の女性が、タイガー魔法瓶株式会社に対し直接雇用を求めていた地位確認訴訟で、平成20年12月11日、大阪地裁において和解が成立した。原告が求めていた職場復帰は実現しなかったが、和解の内容は、タイガー魔法瓶が自らの行為を謝罪するなど、原告勝訴判決にも匹敵するものであった。
     以下、報告する。

  2. 事案の概要
     原告は、2001年、業務請負会社(派遣会社)に雇用され、そこからタイガー魔法瓶に派遣された。もっとも、タイガー魔法瓶は、業務請負会社(派遣会社)の採用決定に先立って原告を面接しており、実質的に原告の採用を決定したのはタイガー魔法瓶であった。原告は、新商品の開発実験の補助要員として、タイガー魔法瓶において勤務した。原告に対する業務指示はすべてタイガー魔法瓶から出され、その指示の中には、必ずしも契約上原告の業務とはされていないものも含まれていた。
     2001年当時の雇用契約書には、原告の雇用が労働者派遣法に基づくものであることは記載されておらず、単に就業先が業務請負会社のタイガー魔法瓶内の事業所であることだけが記載されており、その雇用形態はいわゆる偽装請負にあたるものであった。その後も同様の契約がほぼ自動的に更新されていったが、2004年になって、原告に対して何の説明もないまま、派遣労働者としての就業条件明示書が交付されるようになった。これは2004年3月1日から製造業への派遣が解禁されたことを受けて、原告の雇用形態を偽装請負から派遣に切り替えようとしたものであった。
     さらに、2005年10月に原告に交付された就業条件明示書には、突如、派遣受入期間の制限に抵触する日として2007年3月1日の日付が記載された。タイガー魔法瓶での就労がその時点で終了してしまうのではないかと不安になった原告は、北河内合同労組に相談し、その結果、原告の雇用形態がいわゆる偽装請負であったこと、本来であればタイガー魔法瓶は原告を直接雇用しなければならないはずであることが判明した。
     そこで、原告は、2006年11月、派遣可能期間の制限をすぎており、タイガー魔法瓶には直接雇用の申入義務があるはずであるとして、大阪労働局に是正申告を行った。これを受けて、大阪労働局は、実質派遣が始まった2001年9月からすでに派遣労働受入可能期間がすぎていることを認定し、原告の雇用の安定をはかる措置をとることを前提にこれを中止することとの是正勧告を行った。ところが、タイガー魔法瓶は、原告に直接雇用を申し入れるどころか、労働者派遣契約を打ち切り、原告を実質上解雇したのである。タイガー魔法瓶から何の説明も受けないまま出勤した原告は、私物をロッカーに残したまま、タイガー魔法瓶の門前で追い返されてしまった。

  3. 原告の主張と被告の反論
     原告は、原告を都合よく利用し、最後は使い捨てにしたタイガー魔法瓶のやり方が許せず、悩んだ末、タイガー魔法瓶に対し、直接雇用と慰謝料の支払いを求める訴訟を提起した。
     原告の主張の中心は、@業務請負会社(派遣会社)とタイガー魔法瓶との業務請負契約は職業安定法44条の禁止する労働者供給にあたり、業務請負会社(派遣会社)と原告との雇用契約は無効であること、他方、Aタイガー魔法瓶と原告との間には、実質的な雇用関係があり黙示の労働契約が成立していたことであった。
     業務請負会社(派遣会社)は、タイガー魔法瓶から受託した業務を処理するにあたり何ら独自の資材・設備を使用しておらず、単に原告の労働力をタイガー魔法瓶に提供してタイガー魔法瓶の指揮命令のもと就労させていたに過ぎなかった。このことから、@業務請負会社(派遣会社)とタイガー魔法瓶との業務請負契約が職業安定法44条の禁止する労働者供給にあたることは明らかであった。
     また、タイガー魔法瓶は、業務請負会社(派遣会社)による原告の採用に先立って原告を面接しており、タイガー魔法瓶による実質的な採用行為があった。原告の業務は新商品の開発実験の補助とされていたが、原告は、実際には、タイガー魔法瓶からの指示で、製品の不具合が生じたときに製造ラインに応援に行ったり、調理器具の展示会で調理の実演を行うために東京に出張したり、タイガー魔法瓶の正社員と同様に業務改善の提案を行ったりしており、その就労実態はタイガー魔法瓶の正社員に等しいものであった。原告が業務請負会社(派遣会社)から受け取っていた賃金は、原告がタイガー魔法瓶で勤務した時間に応じてタイガー魔法瓶が業務請負会社(派遣会社)に支払った委託料に基づくものであり、実質的にはタイガー魔法瓶が原告の賃金を支払っていた。これらのことから、Aタイガー魔法瓶と原告との間には、実質的な雇用関係があり黙示の労働契約が成立していたものというべきであった。
     そして、原告は、その主張を補強するべく、大橋範雄・大阪経済大学教授の意見書を提出した。
     これに対し、タイガー魔法瓶は、面接を会社見学と称し、原告の行ったあらゆる業務を実験補助の一環であると強弁したが、その違法性は覆うべくもなかった。

  4. 和解の成立
     ただ、提訴から2年近くがたち、仕事に就くこともできないまま裁判闘争を続ける原告の負担は決して軽くはなかった。また、先行する松下PDP事件では、大阪高裁で黙示の労働契約の成立が正面から認められたものの、松下PDP側が上告し、訴訟がつづいていた。そこで、原告は、和解のテーブルにつくことにした。
     原告・被告双方の考えを聴取したうえで裁判所が示した和解案は、@タイガー魔法瓶がその行為により原告に苦痛を与えたことについて遺憾の意を表明すること、Aタイガー魔法瓶が原告にほぼ2年分の賃金に相当する解決金を支払うことを軸とするものであった。職場復帰は難しいとしても、いったんはタイガー魔法瓶が原告を直接雇用する形式すらとらない案であったことは、原告にとって100パーセント納得のいくものではなかった。しかし、他方で、@は原告が強く望んでいたタイガー魔法瓶の謝罪と実質的には変わらないものであり、Aは原告勝訴の判決が下された場合に匹敵する経済的給付を認めるものであった。裁判所が、タイガー魔法瓶の行為の問題性を看過できないとみていることは明らかであった。
     加えて、本件に関連して大阪府労働委員会で進行していた北河内合同労組による不当労働行為救済申立事件で、大阪府労働委員会が、タイガー魔法瓶に団交応諾義務等を認める不当労働行為救済命令を下した(詳細は本誌2008年11月号に掲載)。労働組合の主張の正当性が認められたことで、労働組合も利害関係者に加えた和解を成立させる環境が整った。
     結局、@原告の就労時、就労終了時におけるタイガー魔法瓶の対応により原告や労働組合が苦痛を被ったことについて、タイガー魔法瓶が遺憾の意を表明すること、Aタイガー魔法瓶が原告に解決金300万円を支払うこと、B本件和解成立をもってタイガー魔法瓶が団体交渉応諾義務を果たしたものとし、タイガー魔法瓶は中央労働委員会にした再審査申立を取り下げることなどを内容として、原告とタイガー魔法瓶との間に和解が成立した。和解の席上、利害関係人である北河内合同労組の執行委員長からは、タイガー魔法瓶の担当者に対して、今後、タイガー魔法瓶がこのような違法行為を行うことがあってはならないと釘を刺す発言もあった。代理人弁護士としては、原告勝訴に等しい和解であったと評価している。

  5. おわりに
     労働者派遣は、一時的な労働力の補充に必要な範囲で、例外的にのみ認められるべきものでなければならない。そのことは、近時の派遣切りによって引き起こされた社会不安が如実に物語っている。そして、労働者派遣法の規制に反して行われたいわゆる偽装請負や一定の違法派遣については、派遣先企業に労働者を直接雇用させる義務を負わせるべきであろう。本件では直截的な形でそうした法律判断を得るには至らなかったが、違法派遣の問題点を浮き彫りにするには十分であった。
     今後は、最高裁が、松下PDP事件の上告審において、派遣先企業と労働者との労働契約関係を肯定することに期待したい。また、そのことを法律上明確に規定した労働者派遣法の改正もまた焦眉の課題である。

(代理人は村田浩治弁護士と私)

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大阪空襲訴訟 12月8日に提訴しました
弁護士 大 前    治

  1. 開戦記念日に提訴
     太平洋戦争の開戦から満67年目を迎えた2008年12月8日、大阪地裁にて「大阪空襲訴訟」を提訴した。この裁判は、空襲被害を受けた原告18名が、政府に対して補償と謝罪を求める国家賠償訴訟である。
     提訴後の記者会見で、原告の安野輝子さんは、「私は空襲で足を失いました。子どものころは、大きくなったら足が生えてくると信じていました。不自由な身体で差別も受けながら63年間生きてきたのに、政府は謝罪するどころか、ねぎらいの言葉すら一言もない。」と、提訴への思いを述べた。

  2. 提訴への道のり
     戦後63年が経過して、なぜ今になって提訴するのか。当然の疑問ではあるが、そこに空襲被害者の置かれた悲痛な状態が表れている。
    (1)空襲被害者のおかれた状況
     アメリカ軍機(B29など)が南洋から飛来して、日本国内の大都市へ多数の爆弾を投下する「空襲」が本格化したのは、戦争末期の1945年(昭和20年)3月頃からである。その前年に陥落したサイパンに米空軍基地が建設されたのが契機である。3月10日の東京大空襲を初めとして、全国各地が空襲を受けた。大阪では、同年3月13日の大空襲で約4000人が死亡するなど、大小多数の空襲を受けている。
     その空襲被害から63年。戦時中は「戦時災害保護法」などにより民間人の被災者も補償の対象とされていたが、同法は廃止されて民間の空襲被害者への援護立法は不存在となった。政府と雇用関係にあった軍人・軍属、引揚げ者、被徴用者などには恩給制度その他の補償措置が存在する。ところが民間の空襲被害者に対しては、政府は「国との雇用関係がない」という理由で一切の援護を拒否してきたのである。空襲被害者は不当に放置され差別されてきたのである。
     諸外国では、軍人か民間人かを問わず、戦闘参加者か空襲被害者かを問わず補償するのが趨勢である。それと比べても日本の状況は異常である。
    (2)長年にわたる被災者の取組み
     1970年代に入り、各地で「戦災傷害者の会」や「空襲を記録する会」が結成され、空襲体験を語り伝える取り組みとともに、政府に補償を求める運動も高まっていった。全国の自治体でも、被災者援護立法を求める意見書が地方議会で可決されていった。
     国会では、1973年から社会党の参議院議員が「戦時災害援護法案」を法案提出した。1981年と82年には全7野党の7議員が共同提出するようになった。ところが、いずれも継続審議または審議未了となった。政府与党が強い抵抗を示してきたからである(それとともに、広汎な市民の理解と運動を広げられなかった面もある。)。連立政権の枠組み変動などで立法の気運が高まったこともあったが、政局との関係で法案成立に至らず今日に至っている。
     被災者は裁判運動にも取り組んだが、最高裁は1987年(昭和62年)6月に、戦争被害は国民が等しく受忍すべきという「受忍論」を根拠に、補償の請求を斥けた。
     このように被災者は、戦後ながらく補償と援護策を求めてきた。決して何もせずにいた訳ではない。幼少時に空襲を受けた被災者らも高齢となり、「もう待てない」、「生きているうちに補償を」という切実な思いから、やむにやまれず提訴に踏み切ったのである。

  3. 訴訟での主張
     訴状では、無謀な戦争を開戦したうえ、判断を誤って終戦を遅らせたという先行行為を指摘し、長期にわたって援護策を実施しなかった国の不作為の違法性を主張している。
     戦争被害は受忍すべきという「受忍論」に対しては、正面から反論しなければならない。この点については今後さらに理論的に精緻を極める必要がある。
     原告らが壮絶な空襲を受けて身体や財産を失い、戦後63年間の苦難の道のりを歩んだ事実を主張していくことにより、「この原告らを放置してよいのか」と裁判官に迫る所存である。

  4. 幅広い市民の支援
     国の不作為の違法性を問う訴訟であり、裁判勝利は並大抵の努力では不可能である。法廷の内外での幅広い市民の支援が必要である。
     この訴訟を支援するネットワークとして、「大阪空襲訴訟を支える会」が提訴直前に結成された。藤本義一さんら著名人が呼びかけ人になり支援を訴えている。「支える会」は、年会費1口3千円で誰でも個人入会できる。他の大型訴訟への参加経験がある中心メンバーが集まっており、新規入会が相次いでいる。
     提訴前から新聞各紙で報道され、紙面を大きく用いて提訴にかける原告の思いが紹介されるなどした。提訴当日は、新聞各紙の一面で報道され、夕方にTV各局で報道された。いずれの報道も、国の無策に対する批判的な立場を表明してくれた。
     提訴の報道をみた市民から、「自分も原告になりたい」という申出が相次いでいる。第2次提訴も予定している。
     この裁判は、過去の戦争被害者への補償を求めるだけでなく、将来にわたり2度と戦争被害者を生み出さないための闘いでもある。多くの方に、「支える会」への入会や募金、さらには裁判傍聴などをお願いさせていただきたい。

(弁護団員は13名。団長・井関和彦、事務局長・高木吉郎。)

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