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- 三菱マテリアル建材株式会社(旧三好石綿工業)は、本年9月11日、泉南地域のアスベスト被害者および遺族35名(患者数19名)に対して、自らの排出したアスベストによって、健康被害を発生させたことについて、責任を認めて、総額1憶2370万円の被害の賠償をしました。
大阪泉南地域には、戦前から中小零細の石綿業者が数多く存在していましたが、三好石綿工業株式会社は、泉南市新家にて1919(大正8)年より1977(昭和52)年まで58年間、石綿紡織品、産業機械用・自動車用のブレーキ関係部品等を生産する地元最大手の石綿業者として操業を続け、後に三菱マテリアル建材株式会社(三菱マテリアル株式会社の子会社)となりました。
大阪じん肺アスベスト弁護団、泉南地域の石綿被害と市民の会は、2006年から現地調査や被害相談会等を実施してきましたが、その中で、深刻な被害実態が明らかになってきていました。三菱マテリアル建材に働いた労働者・近隣の住民によると、「工場内は石綿の粉塵が充満し、労働者は、小麦粉をかぶったようにアスベストの埃まみれになって働いていた。」「最盛期の昭和40年代には、アスベスト粉塵を扇風機で窓の外に排出しながら操業していた。」「会社はアスベストの被害を知っていたはずだが、説明したことがない。」「工場の敷地内には社宅や寮があり沢山の労働者が居住していた。」などなどの実態が浮かび上がってきました。
アスベストは、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、胸膜プラークなどの健康被害をもたらします。咳や痰、呼吸困難などの呼吸器の症状によって、平穏な日常生活が送れなくなり、重症化すると生命の危険に直面します。三菱マテリアル建材に働いていた元従業員や工場周辺の住民のなかに、多くの健康被害が起きていることが段々に明らかになってきました。
2007年6月に、被害者と遺族は三菱マテリアル建材アスベスト被害請求人団を結成して三菱マテリアル建材株式会社に対し、全面的な被害実態調査や補償を求めて交渉を重ねてきました。
この度の和解は、胸膜プラーク患者も含めて、一人の被害者も切り捨てることなく、請求人全員の補償を実現した点で極めて大きな成果です。胸膜プラーク患者については、今後の症状悪化を想定して継続協議としています。
さらに、工場に働いた元従業員に加えて、周辺に居住・耕作をしていて罹患した石綿関連疾患(びまん性胸膜肥厚・石綿肺)の被害者も含んでおり、大きく評価ができると考えています。現在の石綿健康被害救済法は、中皮腫・肺ガン以外の石綿肺などを未だ対象外としており、この点改正の必要性が大きな問題となっています。この点から、石綿被害について一つの救済モデルを提示したと言えます。
和解解決は、市民の会・請求人団、弁護団による十数回に亘る解決申し入れ行動や一万人を超える解決要請署名の提出、粘り強い交渉によって、石綿被害救済に向けた大きな世論を背景に、裁判を経ることなく勝ち取ることができました。
三菱マテリアル建材の石綿によ被害者はまだまだ埋もれたままになっていると思われます。すべての被害が放置されることなく救済されることが今後の課題です。
泉南地域の石綿被害者は、大阪地裁において、国家賠償請求訴訟を闘っています。この裁判も、すでに証人尋問に入っています。さらなるご支援をお願いします。
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