民主法律時報

大王パッケージ愛知工場セクハラ事件 一部和解のご報告

弁護士 垣岡 彩英

1 はじめに

大王パッケージ株式会社(以下「会社」といいます。)の愛知工場に勤務する女性労働者(以下「原告女性」といいます。)が、男性上司らから受けたセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントについて、同人らに対して損害賠償請求をするとともに、同人らのハラスメント等についての会社の使用者責任及び就労環境配慮義務違反についても損害賠償を求めていた裁判で、2025年2月14日、1名の男性上司との一部和解が成立しましたので、ご報告します。

2 1名の男性上司との和解の内容

この男性上司は、原告女性に対し「掃除だけやっておけばいい」と発言する等のハラスメント行為を行ったことを認め、これを真摯に謝罪するとともに、原告女性に対し、解決金を支払うという内容で和解が成立しました。これで原告女性の心の傷が癒えるものではありませんが、早期和解解決により、原告の精神的負担が軽減されたとともに、和解成立に至らなかったもう1名の男性上司と会社の不誠実さが浮き彫りになりました。

3 会社ともう1名の男性上司との和解協議決裂の経緯

原告女性は、もう1名の男性上司と会社との和解協議も進めてきましたが、会社は、本件に関して全面的な口外禁止がない限り、和解には応じないと述べたため、和解成立には至りませんでした。また、もう1名の男性上司は、「原告をなだめ、空気を和ませるため」に、原告女性の腕を突っついた行為は認めるとともに、原告女性の体を触った行為について会社から厳重注意を受けたことを示す書証を自ら証拠提出しておきながら、「セクシュアルハラスメント行為及びパワーハラスメント行為は何ら立証されておらず、損害賠償責任を負うものではない」と主張し、和解による解決には至りませんでした。

4 会社の不誠実な対応

会社は、ハラスメントを未然に防ぐための研修などを十分に実施せず、原告女性からの被害の申出に対しても迅速かつ適切な調査もしていません。会社は、男性上司らの配置転換など、被害を受けた原告女性への配慮のための適正な措置も講じておらず、原告女性は今もなお男性上司と同じ職場での就労を余儀なくされています。大王グループでは行動規範として、安全・安心な職場環境づくりのために、「ハラスメント行為など精神的・肉体的であるかを問わず、職場の仲間の人格を傷つけ、また差別するような言動を行いません。適切に対処します。」と誓うとともに、大王製紙の代表取締役社長名で「私を含む役員は、率先して本行動規範に定める事項を実践します。皆さんも、ご自身の業務において本行動規範に則った行動をとっているかを常々確認するようにしてください。」とのメッセージを発信しています。会社ひいては大王グループが行動規範を実践して、ハラスメント被害を受けた原告女性への早期救済とともに、職場におけるハラスメント撲滅のための適切な措置を講じるべきです。

5 まとめ

原告、組合、弁護団は、和解成立に至らなかった男性上司や会社に対して引き続き責任を追及するとともに、ハラスメントのない職場実現に向けて、今後も奮闘していきます。会員の皆さまには、引き続きご支援とご協力をお願い申し上げます。

(弁護団は、西川大史及び当職)

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