民主法律時報

長きにわたり、ご支援を有難うございました!――JAL整理解雇争議解決

日本航空キャビンクルーユニオン 西 岡 ひとみ

2010年1月19日、日本航空は経営破綻し、同年12月31日、客室乗務員84名、運航乗務員81名を整理解雇しました。

日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)と日本航空乗員組合(JFU)は、被解雇者が地位確認(解雇無効)を求めて提訴(客乗原告72名・乗員原告74名)した裁判を全面的に支援しましたが、東京地裁判決敗訴、東京高裁判決敗訴、最高裁も上告棄却、上告不受理を決定し、敗訴が確定しました。

しかしながら、整理解雇に至る過程で、会社がCCU・JFU両組合への争議権投票に介入した事実は認められました(2016年9月23日、最高裁にて高裁判決が確定し労組が勝訴)。並行して2労組がILOに申し立てた取組みでは、労使協議の継続で解決することを4回にわたって要請しました(ILOから4度の勧告が出されました)。

地位確認敗訴後も、全国からのご支援と2労組の強力なバックアップを受け、職場復帰を柱とした要求の実現を目指し、原告団は全力で活動してきました。

毎年2月の権利討論集会にも原告が参加させていただき、また伊丹空港での年末宣伝では「見守り隊」として弁護士の方々にご協力いただきました。関西では早々と「大阪支援共闘会議」「京都支援共闘会議」「兵庫連絡会」が結成され、物心両面で絶大なご支援をいただきました。民法協をはじめ、支援の輪を大きく広げてくださった中で、両原告団内の方針や要求の違いから2021年以降、JHU(JAL被解雇者労働組合)の発足を契機に原告団の所属組合が3つの組織となり、その後の活動が始まりました。

CCU所属の被解雇者組合員44名は「何をすれば解決の扉を開けることができるか?」の議論を重ねた上、2022年春闘で「被解雇者組合員一人一人の11年間の想い」をメッセージとして社長を含めた全役員に提出しました。

感想として、人財戦略部部長「感銘した」、人財戦略部本部長「心が痛んだ。解決しなければならないと強く思った」、社長「心を打たれた。役員と共有したい」との発言があり、6月13日の夏闘団交では「皆さんからのメッセージは共有した。役員全員が早く解決したい、ということで一致した」との人財戦略部本部長の発言がありました。

そして、6月23日と24日に会社から「解決策」「合意案」が提示され、提案内容で解決したいと伝えられたのです。2010年大晦日の整理解雇から実に12年目になっての解決策でした。

◆解決へ◆◆
会社からの合意案(抜粋)
①・会社と組合は、健全な労使関係が「安全運航の基盤」の一つであることを再確認する。
・会社は、本件解雇問題が社内外に与えた影響の大きさを十分認識するとともに、今後二度と整理解雇の必要性が生じることがないよう、経営の安定化に向けて努力する。
・会社と組合は、「労使関係の正常化、安定化」に努め、職場の信頼感の構築と安全運航の推進に全力をあげることを確認する。
・会社と組合は問題が発生した場合には、引き続き誠意をもって組合と協議することを確認する。
② 会社は、被解雇者組合員に対し、原則希望者全員を対象とした業務機会の提供を行う。

CCUは当該44名全員の意思を確認し、この合意案を受け入れることとしました。

JFUも職討を重ねた上で受け入れ(JFUは協定案)を決定、7月29日に日航本社にて2労組と会社の調印式が行われました。

なお、この間にも会社と2労組の交渉で、被解雇者がJAL地上職(関連会社を含む)として9名就労しています。

合意書締結後、合意書にある②については11月以降42名が受託しスタートしました。解決後もCCU組合員として活動しています。

解決を受けて、ご支援いただいた皆さまから「解決報告集会」開催のご要望を受け、12月からの準備期間を経て2023年4月8日に「12年を経て 新たなスタート、そして未来へ JAL解雇争議解決報告集会」を日比谷コンベンションホールにてようやく開催することができました。多くの支援者の皆さまやJALのOB・OGが駆けつけてくださり、各地からのZoom参加も併せて盛況のうちに終えることができました。

壇上の元原告たちからは「今日、この日を迎えることができたのは、支援者の皆さまのおかげです。明日からあらたな一歩を踏み出していきます」と感謝の気持ちをお伝えしました。

◆私たちの想い◆◆
この合意案で、私たちが一番重視したのは「健全な労使関係の構築」という部分です。

あの整理解雇で、多くの人が傷つきました。

しかし、今思うのは「みんなで頑張って新たな一歩を進もう」ということ、そして社員であることに誇りを持って長く働いた会社に対して「後輩たちの労働条件を守ってほしい、安全運航を守ってほしい」ということです。

結びになりますが、解決の日を迎えることができ、民法協の皆さまをはじめ、私たちの裁判、ILOへの取組みに携わってくださった弁護士の皆さま、ご尽力いただいた国会議員の皆さま、全国の支援者の皆さまのこれまでの多大なご支援に心よりの感謝とお礼を申し上げます。

民法協の益々のご発展を祈念申し上げるとともに、引き続き私たちの活動にご理解、ご支援をいただければ幸甚です。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP