民主法律時報

直接雇用申込みみなし制度に関する内部通達情報公開請求訴訟 大阪地裁判決

弁護士 冨 田 真 平

 会員の谷真介弁護士が原告となり、大阪地裁に提訴した直接雇用申込みみなし制度(以下「みなし制度」という)に係る助言等(派遣法40条の8)に関する内部通達の情報公開請求訴訟において、本年9月8日、一部の開示を命じる判決が出たので、報告する。

 2015(平成27)年10月1日に直接雇用申込みみなし制度(派遣法40条の6)が施行された際に、厚生労働大臣(都道府県労働局)が、労働者の求めに応じて、労働者に対し同制度の対象になるかどうか必要な助言を行い、さらに労働者が承諾を行った場合にこれを就労させない派遣先の企業に対し、指導・勧告を行うことができるとの規定が定められた(派遣法40条の8)。これは、一般の派遣労働者が、自身がみなし制度の対象となっているか把握することは極めて困難であり、また仮にその可能性を認識できたとしても、訴訟を提起することに躊躇することも少なくないことから、行政の指導により直接雇用を実現するために設けられた制度である。

 しかし、みなし制度が施行された後、民法協や非正規労働者の権利実現全国会議(非正規会議)の弁護士が関与した事案(東リ事件、日検事件など)で、都道府県労働局が(訴訟において偽装請負が明確に認定された事案であるにもかかわらず)偽装請負の認定や指導について極めて消極的な態度をとることが続いた。

 このような消極的な態度の背景に何か内部文書があるのではないかと考えた谷弁護士が厚生労働省及び大阪労働局に対し内部文書の情報公開請求をしたところ、上記40条の8に関する内部通達(部内限)が存在することが判明した。しかし、同開示文書のほとんどの部分が「開示されると監督対象となる事業者が対策をとり適正な監督が行われなく恐れがある」という理由で不開示(マスキング)とされたため、同不開示部分について情報公開を求めたのが本訴訟である。

 訴訟において、国側は、内部文書の記載を見た派遣労働者が40条の8の助言等を求めても仕方ないと思って助言の求め等を差し控えるおそれがあるとの、自ら消極的と受け止められる記載があることを自認する(驚くべき)主張まで行ったが、大阪地裁は、本年9月8日、その文書の一部について不開示が違法であるとして国に開示を命じた。

 原告側としては、開示が認められなかった部分についてさらに開示させるべく控訴を行い、今後大阪高裁で審理が行われることになる(国は控訴せず)。

みなし制度については、施行後ほとんど活用されていない状態にあり、その大きな原因の一つに都道府県労働局による上記のような消極的な姿勢がある。そして、その背景に上記文書があることは上記国側の主張からしても明らかである。

みなし制度に関する不適正な労働行政をただし、適正な労働行政を実現するためには、まずはこの内部文書の内容を明らかにした上で、これを是正させることが重要である。会員の皆様には引き続きご支援をお願いする次第である。

(原告は谷真介弁護士、弁護団は村田浩治、河村学、大西克彦、安原邦博、佐久間ひろみ、西川翔大各弁護士と筆者)

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