弁護士 谷 真介
1 これまで何度も民法協ニュースで報告してきましたが、泉佐野市では、平成23年の千代松市政誕生以降、数々の労働条件切り下げとともに、労働組合(泉佐野市職労)軽視・無視の不当労働行為が繰り返されてきました。泉佐野市職労は公平委員会への措置要求、本件も含めた6件(併合等され4つのグループに分かれています)の大阪府労委に対する不当労働行為救済申立をし、労使関係の正常化を求めてたたかっています。
大阪府労委では、平成27年に入り、1月には職員基本条例等についての不誠実団交・平成25年度組合事務所使用料減免申請不承認・給与減額等についての不誠実団交等について、5月には平成26年度組合事務所減免申請不承認等について、7月には本件チェックオフ問題について、相次いで3件もの支配介入・団交拒否の不当労働行為を認定する救済命令が発令されました。さらに、この6月9日に、平成27年度以降のさらなる給与削減に関する団交拒否(不誠実団交)事件について、4件目の救済命令が交付されました(はじめて誓約文の掲示まで認められました。別号にて詳細に報告する予定です)。なお、1月と5月の2件の府労委命令については、中労委ですでに結審しており、今年秋ころにも、初めての中労委の判断が出される予定です。
2 さて、本件のチェックオフ事件は、平成26年2月に突然、泉佐野市が数十年間無償で行ってきた組合費のチェックオフ(チェックオフ自体の根拠は条例)に3%の事務手数料を徴収する、これに応じなければチェックオフを中止すると通告し、泉佐野市職労が申し入れた団体交渉は管理運営事項として拒否したまま、実効確保の措置勧告申立に基づく大阪府労委の口頭要望も聞き入れず、結局チェックオフを中止したという事案です。チェックオフを中止され、市職労は金融機関の口座引き落としに変更及び手集めで集金せざるをえず、毎月の組合費徴収に多大な労力と費用がかかっています。
大阪府労委は、平成27年7月、これが支配介入・団交拒否(管理運営事項にはそもそも該当しない)の不当労働行為に該当するとして、①手数料を徴収することなくチェック・オフを再開すること、②チェック・オフが廃止されたために組合が自動送金により組合費を徴収したことにより生じた送金手数料相当額(1口座1回当たり27円)の実損を回復すること、③同様の不当労働行為を繰り返さない旨の誓約文の手交を命じる救済命令を交付していました。
これに対し、泉佐野市は中労委に再審査申し立てをしていた先の2件と異なり、大阪地裁に大阪府労委を被告として取消訴訟を提起しました。泉佐野市職労は、これに補助参加し、棄却を求めていました。
3 判決に先立ち、大阪地裁は府労委が申し立てていた緊急命令について本年3月29日に棄却していたため判決内容が心配されましたが、5月18 日の大阪地裁判決は、厳しく不当労働行為を断罪する勝利判決でした。
判決は、これまでに府労委で不当労働行為が認定されている数々の泉佐野市の行為や、千代松市長のブログでの発言等から、チェックオフの中止は、泉佐野市が組合の弱体化を意図したものと評価されてもやむを得ないとして、明確に支配介入意思を認め、チェックオフは労働組合にとって活動の財政的基盤を形作るものであるとして、これを何ら合理的な理由なく、協議説明も欠いたまま一方的に中止することは支配介入の不当労働行為に該当するとしました。また、チェックオフのような団体的労使関係事項については、義務的団交事項に該当するとし、団交拒否の不当労働行為に該当するとしました。
一方で、申立人適格に関して、判決は、労組法適用職員と地公法適用職員の混合組合の申立人適格自体は認めながら、チェックオフは組合員ごとに可分であることから、地公法適用職員の組合費のチェックオフに関する部分は、申立人適格がないとして、同部分についてすべての命令を取り消しました。この点は、労組法適用職員か否かを区別することなく条例に基づいてチェックオフを行い、事務手数料についても両者を区別せずに一括して泉佐野市職労に申し入れをしたのですから、その全体を不当労働行為であるとして救済の申立人適格を認めるべきであり、こう解しなければ混合組合の申立人適格を認めた意味が半減してしまいます。この点については、府労委が控訴しましたので、泉佐野市職労としても高裁で覆すべく控訴しました。
また本体の不当労働行為と判断した部分については、泉佐野市が控訴しましたので、全体が控訴審の判断に委ねられることになりました。
泉佐野市職労は、現場でのたたかいはもちろんのこと、中労委、大阪高裁でさらに勝利を積み重ね、一日も早く労使関係の正常化を図るべく奮闘を続けます。引き続きご支援をお願いします。
(常任弁護団は大江洋一、増田尚、半田みどり、谷真介)