民主法律時報

泉佐野市職労不当労働行為救済申立

弁護士 半 田 みどり

 泉佐野市職員労働組合は、5月31日、泉佐野市による不誠実団交・組合事務所使用料の徴収について、不当労働行為救済申立を行った。
 今回の申立に至る前提事実としては以下の経緯がある。

 平成23年4月に就任した千代松市長は、職員給与20 %削減をマニフェストに掲げ当選した。そして、前市長時代に誠実な労使交渉の積み重ねにより実現してきた賃金水準の引下げの経緯を無視し、給与削減を強行しようとし、労使交渉の「公開」を要求した。そして、20 %削減案が成立の見込みがないと分かるや、急遽8~13%の削減案を上程し、労使交渉もないまま成立させた。これに対し、組合員を中心にした514名の職員が、公平委員会に、8%削減を取り消すこと等を求めた措置要求を行った。要求事項は棄却されたが、判定書において、「当局側においては、今後は、十分に説明責任を果たした上で、職員団体と誠実な交渉を行い、円滑な行政運営に支障が出ることのないよう希望し、特にこれを意見として申し添える」と異例の意見が示された。

 しかし、市は、この意見の重みを無視し、次には職員基本条例・特殊勤務手当の廃止に関する条例案の制定・時間外勤務手当の見直しに関する規則の改正を強行せんとした。組合は誠実な団交を行い、上記3点の必要性の説明をするよう求めたが、市は団交の公開に固執し、団交の実施日も一方的に指定したため、結局団交が開催されないまま上記3点の条例も可決された。

 組合は、誠実に団体交渉に開催することを求め、平成24年12月19日労働委員会にあっせんを申請し、以下のあっせん案が示された。
 (1)使用者は、職員基本条例・退職 手当条例等について、組合に対し短期の協議期間の提案となったことを謝罪するとともに、結果とし て団体交渉が開催されなかったことに遺憾の意を表すること。
 (2)今後、労使は団体交渉を行うにあたって、下記を遵守すること。
  ①使用者は、団体交渉の開催にあたって、「公開」を条件としないこと。
  ②組合は、使用者からの提案に対し、特別の理由のない限り、原則協議に応じるものとすること。
  ③団体交渉開催にあたって、労使双方は地方公務員法第55条に基づく予備交渉を行い、日時、議題、場所、人数をあらかじめ取り決めて行うこと。
 (3)使用者は、泉佐野市公平委員会の意見を尊重し、今後組合と誠実に協議するよう努めること。また、労使双方は信義誠実の原則に 基づき、相互理解に立って、円滑な労使関係の確立に努めること。

 しかし、市は、あっせん案を受諾せず、あっせんは不調に終わった。
 そこで、組合は、今回、組合員の労働条件に関わる条例について、市長が泉佐野市議会に議案を提出するに先立ち、組合との間の団体交渉に誠実に応じなければならないとの救済命令申立を行ったものである。

 さらに、市は、平成25年3月、組合事務所の無償貸与を不承認とする形で新たな組合攻撃を加えてきた。
 泉佐野市職労の組合事務所は昭和23年以降無償貸与とされており、遅くとも平成12年頃より、「地公法52条に規定する職員団体であり、かつ職員団体の登録についての条例(昭和41年泉佐野市条例第26号)で公平委員会へ登録を行っている職員団体の活動事務所であるため。」との理由で、100%減免が承認されてきた。

 今までこの理由で減免が認められてきたのに、今年度から減免を不承認とした理由について、市当局は、減免不承認決定通知書には「本来は不承認の理由を明記する」ところであるが、実際は「市長の意向だけの理由であり明記不可」としか説明できない有様であった。

 組合は、平成25年4月4日、①従前どおり組合事務所の使用料の減免を行い、組合事務所を無償貸与すること、②従前とは異なり組合事務所の使用料の減免申請を不承認としたことの理由を説明し、協議を行うこと、③組合事務所の使用料の減免申請の不承認によって労働組合が受ける不利益の回避について協議を行うこと、④代替手段・措置の可能性の存否やその条件、検討状況について説明し、協議を行うこと、を議題とする団体交渉を申し入れた。これに対し、同月8日、市は、組合に対し、上記団体交渉申入れについては、地公法55条3項の管理運営事項に該当することを理由に、交渉を拒否した。

 組合事務所は団体的労使関係の運営に関する事項そのものであり、その使用料に関する事項についても、当然に義務的団体交渉事項であって、市の上記団交拒否は不当労働行為にあたる。組合事務所は組合の団結及びその組合活動にとって不可欠であり、このような組合の性格は何ら変化はないにもかかわらず、平成  年度より突如として、しかも何ら協議も経ずに、組合に対してのみ使用料を徴収することは、組合の弱体化を意図した組合嫌悪意思に基づく行為と断じざるを得ない。また、これにより組合の財政に打撃を与え、その存続や活動を困難ならしめることで、支配介入に該当するものである。

 そこで、救済申立においては4月4日の団交申し入れに応じること、平成25年4月1日以降も、申立人らから使用料を徴収してはならないこと等を求めた。

 千代松市長は、このように職員攻撃・組合攻撃を繰り返し、自らのブログでもその正当性を発信し、公務員と市民との対立をあおっている。一定数の市民がこれを歓迎する向きがある中で、職員らは、頑張っても分かってもらえない、と悩みつつも組合活動を行って日々団結を強めている。組合を孤立させず、共感を広げていく活動が私たちにも必要だと感じる。

(弁護団は、大江洋一、増田尚、半田みどり、谷真介)

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