民主法律時報

中国雲南省 麗江 シャングリラ紀行(第2回)

 弁護士 福 山 孔市良

4月 29日(日)晴れ 麗江へ

1 雲南省の少数民族について
 昆明のホテルのモーニングコールで午前5時に起床する。外はまだ暗い。起きてすぐお湯を沸かし、紅茶を飲む。ホテルのロビーに集合して、各自弁当(パンとタマゴ、水、バナナ等)を持って昆明空港へ出発。空港には午前7時前に到着したが、中国も連休のためか大変混雑している。
 7時40分、MU2581で麗江へ出発。飛行時間は約50分で、麗江の空港に到着する。晴天で、空気が澄んで透明である。空港には、麗江の観光ガイドをしてくれる陳さんが迎えに来てくれていた。この陳さんは雲南省大理の白(ペー)族の出身である。そういえば、昨日昆明から全行程のガイドとして参加してくれたエンさん30歳は、雲南省の南西部ミャンマーやラオス国境に接するシーサンパンナ・タイ族自治州、ヤオ族出身の勉強家の女性である。
 中国には56の民族があり、90%以上が漢民族で、残り55が少数民族である。中でも雲南省は20以上の少数民族が住んでおり、それぞれ各地で一番多い民族が、自治州の州長を務めている。
 例えば、これから行く麗江には納西(ナシ)族、大理は白(ぺー)族、シーサンパンナはタイ族、麗江の次に行くシャングリラはチベット族ということで、同じ地域にいろいろの民族が共存して生活をしている。その特徴は、言語、衣類、祭、食事で区別できるのではないかと思われる。特に文化面では、麗江の納西(ナシ)族の象形文字(生きている東巴文字)と古楽は世界的にも注目されている。

2 雲杉坪(うんさんへい)へのハイキング
 麗江の空港に着いてすぐ、どこにも寄らないで玉龍雪山のすぐ近くの雲杉坪(3240メートル)の高原にハイキングに出発する。近くまで行くとパスポートが集められた。どうも入場に一定の許可が必要のようだ。なぜかよく分からない。空港ではあれだけ好天であったのに、もう空は曇ってきており、玉龍雪山(5996メートル)の頂上付近はよく見えない。午前10時40分、ビジターセンターでシャトルバスに乗り換え、下車してロープウェイで10分位で雲杉坪に到着する。
 美しい広い草原を板敷きの道がぐるりと囲んでおり、遊歩道を歩いて回るようになっている。ここからは玉龍雪山の東壁を見ることができるのだが、天気が急に悪くなり、雨模様で展望は良くない。4月末は花の季節には少々早いのか、ところどころにシャクナゲの花が咲いている位で、目立つ花はない。小さなハルリンドウの花が咲いているのを見つけたが、小さすぎて撮影しにくい。草原の一角に絵馬を売っており、これに願い事と名前を書いて、木々にぶら下げているのが見られた。なんだか日本と同じような懐かしさを感じ、一枚買ってしまった。
 雲南地方は6月末から雨季で、それまでは乾季で雨が少なく、雨が降らないと花が咲かないと言われた。一ヶ月来るのが早かったかなあと思う。天気か花か、選択が難しい。私達一行も、草原のお花畑を見るというつもりで来ているのに、全くといっていい程花がなく、何となくがっくりした気持ちで早々とロープウェイで帰ることになった。
 この季節、街角のあちこちで、おばさん達がバケツにさくらんぼをいっぱいにして売っているのが見られる。蒲田さんは一句作って発表していたが、忘れてしまった。小さな赤い実は季節感があって美しかった。

3 東巴文字博物館
 象形文字といえば、数千年前に使用されていた人類の文字と思いがちであるが、ここ麗江には生きている象形文字が存在している。それが東巴(トンパ)文字である。
 雲杉坪から帰って市街地の北約1キロに位置する公園の北側の麗江市博物館を訪れた。この博物館は納西(ナシ)族の起源や特徴、文化、伝統儀式やトンパ文字に関する展示がなされている。
 現在残るトンパ文字は1400とされているが、トンパ文字はトンパ教典に使用されている。トンパ教はナシ族の原始宗教で、チベット仏教や仏教、道教などの影響を受けた多神教で、7世紀には、ナシ族の社会に存在していたことが分かっている。トンパ教には、トンパ(知恵を持つ者)といわれる司祭がおり、かつては共同体の役割をはたしていた。
 現在でも、トンパ教の司祭がいて、毎日博物館に出勤してトンパ文字を書いて販売しつつ、トンパ文字の保存と普及につとめている。納西族の人の名前の70以上が和(ワ)さんで、現在の司祭は和前文で90歳近い人である。トンパ文字は現在も生きている象形文字として、最近世界記憶遺産に登録された。
 私達はこの司祭の和さんと一緒に写真を撮り、和さんにトンパ文字を自分の氏名を入れて書いてもらった。200元・3000円は、トンパ文字に対する保存協力費と思って提供した。帰ったら額を買って、それに入れて飾るつもりである。
 トンパ文字は象形文字としてよりもデザインとして見ると大変興味深くあり、芸術性もある。街中の土産物屋はトンパ文字のデザインのショールなどトンパ文字だらけで、観光商品としては現在も十分に役立っている。 (つづく)

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