民主法律時報

Q:相対評価は問題では?

Q:条例案では、一般職員の人事評価について、相対評価を徹底して、一定数を下位評価することを義務づけられますが、どのような問題が生じるでしょうか。

A:条例案11条では、SからDの5段階のランクについて、Sが5%、Aが20%、Bが60%、Cが10%、Dが5%程度の分布となるように評価を付けることが義務づけられています。
 このように、徹底した相対評価が行われれば、職員の努力や能力に拘わらず、毎年必然的に、C評価やD評価を受ける職員が一定数生じます。
 まず、こちらのQ&Aで述べたように、そもそも公務労働自体が、このような成果主義になじまないものですから、評価が職員の能力を反映しているものとはいえないでしょう。
また、職員がどれほど熱心に勤務に取り組んでいても、当該部署において、誰かには必ず下位評価が付いてしまい、それによって給与などの労働条件に差がついてしまうことになりますが、このような結果は不合理です。
 さらに、「能力」や「業績」という評価項目も抽象的である上、評価をするのは評価権者、即ち上司ということになりますが、1人の人間による評価が公平公正に行われる保障は何もなく、結局は、上司に迎合するような職員によい評価が与えられるということにもなりかねません。
 加えて、このように徹底した相対評価により、給与等に差がつくということになると、個々の職員がそれぞれ、過酷な競争原理にさらされることになります。結果として、評価権者による評価に繋がる業務や、成果が目に見える業務ばかりを優先してしまったり、住民の意向を無視した拙速な業務が行われることにもなりかねません。また、同僚と競争することを強いられるため、職員が、協調したり助言を求めたりすることに消極的になってしまい、円滑な住民サービスが害される可能性すらあります。
公務の場にこのような競争原理を持ち込むことの弊害は、結局はそのしわ寄せが住民に来ることになり、一般企業の場合よりも一段と大きいといえます。
 さらに、本条例案では、「人事評価の結果が2回連続してDであった職員」(別表4、1号)が分限免職の対象とされることになっています。
 しかし、本条例のように徹底した相対評価を実施した場合、職員の努力等に関わらず、必然的に、毎年、一定数の職員がこの項目に該当することになってしまいます。
成果主義自体の問題、また、評価の公正さの問題など、問題が多々ある中で、毎年必然的に一定数の職員が、公務員としての地位を失う可能性にさらされることになるのです。これは、職員自身の地位や生活だけの問題にとどまりません。このような制度の下で、職員が住民の方を向いて仕事ができるのか、また、上司から評価されにくい業務に対しても、使命感をもって取り組めるのかと考えれば、このような評価制度の問題点は自ずから見えてくるのではないでしょうか。

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