Q:大阪維新の会は、「公務員の身分保障」が硬直的な行政の原因であるかのように主張しています。そもそも、地方公務員の身分は、どのように保障されているのでしょうか。なぜ、そのような制度になっているのでしょうか。身分保障が行政の硬直化の原因なのでしょうか。
A:条例案は、前文で、公務員について、「特権的な身分階級」のごとく扱われてきたとして、そのような人事運用を改めると述べています。果たして、公務員は、そのような「特権的な身分階級」であったのでしょうか。
地方公務員の一般職員は、地方公務員法同法28条に定められた事由がなければ、「その意に反して、降任され、若しくは免職され」ないなどの身分が保障されています(地方公務員法27条2項)。このような身分保障は、地方公務員が時々の首長や任命権者の恣意によって立場を左右されないようにするために設けられています。この身分保障によって、公務員が継続して公務に従事することができるようになり、住民の利益を擁護することにつながります。
一方、民間労働者であっても、その意思に反して、降格や解雇する場合には、正当な理由が必要とされます。懲戒を理由とする場合には、要件や手続をあらかじめ就業規則等で定めておくなど適正な手続によることも求められます。解雇によって収入が絶たれ、生活が一変するような取り扱いをすることが制限されているという点では、公務、民間を問わず、労働者の権利を守るうえで共通する法の考え方です。
ところが、条例案によれば、相対評価で最低ランク(D)が2年続けば「勤務実績不良」の扱いを受けて指導・研修の対象者とされ、ゆくゆくは分限免職としてクビを切らされます。このような過酷な人事評価は、民間でも見当たりません。このような相対評価で低評価とされたことを理由とする解雇は、必ず一定割合の労働者をクビにすることになり、権利の濫用であって無効とする裁判例もあります(セガエンタープライゼス事件・東京地裁平成11年10月15日決定)。条例案では、民営化や一部事務組合化により職場がなくなった場合に、再就職の機会さえ確保されていれば、分限免職が許されるなどとしていますが、民間でこのようなリストラをすれば、整理解雇規制の法理に反して無効と判断されるでしょう。
このように条例案に従えば、「ふつうの組織」(大阪維新の会のプレスリリース)どころか、「ブラック企業」も真っ青な職場になってしまいます。こんな労働条件では、住民のために働こうと考える公務員になろうとする人がいなくなってしまうでしょう。
結局は、橋下府知事が、職務命令で縛り付けて、自身の言いなりになる公務員づくりをめざしているとしか思えません。