民主法律時報

Q:保護者の義務とは?

Q:条例案は、保護者に対しても学校運営への参加を義務付けているとのことですが、どういう義務でしょうか。

A:「保護者は、学校の運営に主体的に参画し、よりよい教育の実現に貢献する様に努めなければならない(10条1項)。」、「児童生徒の保護者も、クラブ活動をはじめとする学校運営に参加するなど、主体的に積極的な役割を果たすように努めなければならない」(5条2項)という義務を課しています。
 確かに、これは努力義務でこれを破ったときの罰則は定められていません。
 しかし、これまでの保護者自身登下校時の見守りや、PTA活動への参加、学校行事への参加など学校の運営に対して一定の役割を果たしてきました。
 条例案では、「主体的積極的な役割」「学校運営に主体的に参画しよりよい教育の実現に貢献するように努めること」が保護者に求められ、これまで以上の義務や負担を保護者に課すことになります。
 例えば、保護者によっては仕事やそれぞれの家庭の事情から、学校行事に参加することや、その準備のための会議などに参加できないこともあるでしょうが、そうした場合に、条例で決められているのに参加していないのは、保護者としての責任を果たしていないと学校関係者、他の保護者から言われることも十分考えられます。また、先生自身、自己の受け持っている生徒の保護者の学校行事等への参加割合や運営に積極的に参加させているかも含めて勤務評価の対象になるので、これまでは、家庭の事情でやむを得ないといってきたことが、先生自身も、保護者に強く押しつけていかなければならなくなるでしょう。保護者の都合や家庭の事情もある程度尊重しながら先生と保護者のやりとりの中でやってきたことが条例があるために強制されるというのはおかしなことといわざるを得ません。
  なお、条例案は、保護者に義務づけたもので、保護者自身が、学校教育に対して、子どもの気持ちを代弁したり子どもにとってよいと思うことを自由に提案する権利を定めたものではないことに注意をしなければいけません。
 あくまで、ここでのよりよい教育とは、条例前文にある様に「グローバル社会に十分に対応できる人材育成」というもので、一人一人の子供達の心や体を大切にするという発想とはほど遠いものです。また、条例案は、「保護者は教育委員会、学校、副校長、教員及び職員に対し、社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない。」(5条3項)と定めています。例えば子どものいじめ問題などに学校側が対応してくれない場合に行政やマスコミなどに駆け込んだ場合などは「不当な態様での要求」であるといわれることも考えられます。

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