全大阪借地借家人組合連合会 船越 康亘
全大阪借地借家人組合連合会(大借連)は、昨年9月23日、第35回定期総会を開き、創立48年を迎えました。
家賃・地代高騰のなか、住環境改善へ
1960年代後半、人口の都市集中によって過密都市化が進み、乱開発による狭小過密住宅が乱立して住環境の悪化を引き起こし、公害問題とともに深刻な都市問題となりました。
当時の政府は、戦前に創設され、地代家賃の最高限度額を決めた地代家賃統制令(以下、「統制令」)の「廃止」を前提にして、1971年12月28日告示により、最高限度額を地代で2.8倍、家賃で2.7倍に引き上げて地代家賃の大幅な値上がりに追い討ちをかけました。大借連は、「統制令」の廃止に反対するために告示取り消しの違憲訴訟を提起しました。1981年、東京高裁は、告示行為は政府の裁量の範囲との判断を示す一方で、最高限度額を超えて合意した地代家賃は無効であるとの見解を示しました。
この「統制令」廃止反対運動の最中に、政府は、消費者米価の物価統制令の適用除外を廃止する方針を示し、国民の中に「米の物価統制令廃止」に反対する国民的運動が高まりました。
大借連は、政府の「米の物価統制令廃止」と「統制令」廃止の方針は、国民の衣食住に重大な影響を与える悪政であり、国民生活を不安に陥れる共通した課題として重視して取り組みました。
公営住宅の大量建設、家賃補助制度を
地代家賃の値上げ問題は深刻な社会問題となり、借地借家人の住生活に深刻な影響を与えました。とりわけ、民間借家の家賃負担が重くなることで政府の持家政策に拍車がかかり、住宅ローンが住生活に重荷となって「ローン破綻」に陥る国民が急増しました。
大借連は、天井知らずの家賃の高騰と「ローン地獄」に追い遣られる持家政策に反対し、「国民が安心して住み続けられる安価な公営住宅の大量建設」こそ国民の住生活の安定が確保できるとの見解を発表し、国民本位の住宅政策の実現を掲げて運動してきました。
合わせて、大借連は、民間借家居住者で公営住宅入居有資格者に対しては、公営住宅入居資格者並みの家賃補助制度の創設を求めてきました。現在も、低所得者や新婚世帯への家賃補助制度を創設することを課題として国と自治体へ要求し、署名運動に取り組んでいます。
借地法・借家法改悪反対の全国運動展開
80年代前半、中曽根臨調路線がすすむ中で、借地借家人の憲法であり、民事の基本法である借地法・借家法の改悪案が示されました。しかし、国民の激しい反対運動によって、借地法・借家法の名称を借地借家法に変更し、定期借地制度、定期借家制度を新設されたものの、既存の契約には適用しないことなど当初推進派が期待していた「改正」は実現しませんでした。この過程では、明け渡しの正当事由や賃料改定の事由などについても、基本的には「改正」が見送られました。
このように推進派が期待していた全面的な改悪に歯止めとなったのは、全国借地借家人組合連合会を中心とした住宅要求団体や自由法曹団などの広範な国民が改悪反対運動に取り組んだ成果でもありました。
空家対策は安全安心の街づくりの視点で
2014年11月27日、「空家等対策の推進に関する特別推進法」が公布されました。空家は、全国で約820万戸、大阪府内では67.9万戸(2013年、空家率14.8%)にのぼり、住宅改善の課題となっています。
大阪の空家は、賃貸用住宅が最も多く、41.9万戸あり、約25%15.7万戸が朽廃・破損状況と劣悪状態です。大阪府では、空家居住用住宅に対して固定資産税、都市計画税の特別措置を適用除外にする税制を今年度から実施し、空家を除去する誘導策を推進しようとしています。
空家の放置は防災面や地域治安など地域環境の悪化の要因ともなっており、地域住民の関心ごとで、住民参加の街づくりに発展する可能性が生まれています。大借連では、安全で安心して住み続けられる地域づくりをめざして運動しています。