おおさか労働相談センター 遠近 照雄
2月27日(木)午後6時30分から大阪グリーン会館2階大ホールにて2025年・第2回労働相談学習会を開催しました。「ハローワークの求人を見て応募したが、労働条件が全く違った」等の相談から、労働条件の明示義務について学習、交流をおこないました。講師は堺法律事務所の榧野寛俊弁護士。7産別・7地域・その他、計27名の参加がありました。冒頭、主催者挨拶で、おおさか労働相談センター川辺和宏所長は「労働条件明示義務が守られていないところが多い。労働委員会でも絶対的明示事項が示されていない事例が多くある。雇用破壊がすすむ中、どう雇用を守っていくかが課題」と、学習の大切さと意義を話しました。
情勢報告(裁判判例等の報告)
民法協事務局次長・大阪法律事務所の加苅匠弁護士から昨年11月から今年2月までの注目すべき裁判例などの情勢報告がありました。学習会テーマ「労働条件の明示義務」に関連した判例報告では、ハローワークの求人票に「期間の定めなし」と記載された会社に応募し、ウェブ面談を受けて採用内定を通知された後に、就労開始前に契約書作成のために訪れた会社事務所で、期間付き契約書に署名押印した。就労開始後2ヶ月で突然会社から期間満了終了を通知され、本人自署の2ヶ月間の期間付き契約書が出てきたという事案です。裁判所は、内定通知時点で、期間についての特段の通知がないことから無期の始期付き契約が成立したと認定し、その後の期間付き契約書の作成による不利益変更については、最高裁判例に基づき真意とは認められないとしたものです。その他、労働者側勝訴、敗訴の事案についても裁判所の判断についての詳細な報告がありました。
労働条件の明示義務について
学習会では、榧野寛俊弁護士を講師に迎え、労働条件の明示義務についての基本的な知識と相談を受ける際のポイントについて学びました。相談事例として、「 ハローワークの求人票から、『初任給25万円』という仕事を見て応募したが、労働契約を結ぶ際に全く違う条件を示され労働契約を結ばされた。こんな違法を堂々と許していいのか。また、雇用契約書はあるが、条件通知書をくれない。会社に対して出せと言っているが、必要なことは雇用契約書に書いてあるとの返答で全く聞く耳を持たない。こんな会社は許せない。どう思いますか。損害賠償請求をしたい」との相談内容に対して、「相談を受けた側は何を聞き取るべきか」について、労働条件明示義務の内容と趣旨(自己を拘束することになる労働条件を労働者に正しく理解させることにより、労働者が自己に不利益な労働契約を締結させられることを防止し、労働者を保護する点にあること)、令和7年度に改正された事項、裁判例、労働条件通知書と雇用契約書の違い、求人票の労働条件等、レジュメをもとに解説いただきました。相談者への対応として、ハローワーク求人票の『初任給25万円』について、『見込み額か決定額か』、求人票そのもの(実際のもの)を見る必要があること。労働条件について『詳しく説明されたのか、納得したのか』、雑誌・新聞等の求人広告は明示義務の対象にはならないこと等、基本的なところをしっかりと学ぶことができました。
学習後の事例検討では、「地域労組中央区こぶし」から実際に相談を受けている事柄と雇用契約書について質疑、意見交流を行いました。雇用契約書に記載されている「就業場所」の問題、基準外賃金(固定残業代)の問題、制服代の本人負担の問題等、次々と質問が飛びだし、意見交換も活発に行われました。