民主法律時報

2025年権利討論集会のご報告

  弁護士 藤井 恭子

1 昨年に引き続いての会場中心開催

2月15日、2025年権利討論集会を開催いたしました。
昨年に引き続き、会場での参加を中心として実施し、全体会は会場とZoomを併用、分科会は第3分科会のみZoomを併用し、他の4つの分科会は会場のみで開催しました。マスク着用や会場での会話についても特に制限をせず、コロナ前の権利討論集会に戻ってきた感がありました。会場参加者は延べ186人、Zoomでの参加者は述べ37人でした。

2 記念講演「外交で平和をつくるとはどういうことか」

全体会では、弁護士で、新外交イニシアティブ(ND)代表の猿田佐世さんをお招きし、「外交で平和をつくるとはどういうことか」と題して講演をしていただきました。近年、ウクライナ危機やガザ侵攻など国際情勢が緊迫しており、また、本年1月には第2次トランプ政権が誕生する中で、世界の行く末が見通せなくなっていると感じている人が多いように思われます。

そのような情勢の中で、筆者と同世代の女性弁護士であり、なおかつ、「民間外交」の活動を精力的に行いながら発信を続けている猿田さんに、一人一人の市民が平和を構築するために、どのような働きかけをしていけるのかというテーマでお話をして頂くことは、大変貴重で意義のある機会だと感じました。

講演では、現在の米・中関係を中心とする世界の情勢やパワーバランスがどのようになっているのかをわかりやすく説明して頂いた上で、日本がとるべき外交政策、特に台湾有事を回避するために、軍事力を増強するだけではなく、対中関係で「安心供与」をすることによって、武力衝突を抑止していく必要があると説明されました。また、ベトナムなど東南アジアの国々が、自国の平和を維持するために、多様な外交努力をしている事実が紹介されました。

アンケートでは、猿田さんの記念講演で、これまでは遠い存在だった外交について知る機会を得た、身近なところから実践して、学びを深めたいといった声をいただきました。猿田さんには、めまぐるしく動く最新の情勢を取り込みながら、ぎりぎりまで準備をしていただきました。そのおかげもあって、参加者にとって学びの多い講演をしていただくことができたと思います。今後、民法協でも国際情勢や日本の外交政策に対するアクションができたらと思います。

3 特別決議「労働基準関係法制研究会報告書に対する意見」

特別決議として、2025年1月8日に厚生労働省「労働基準関係法制研究会」(労基研)が取りまとめた報告書に対する意見について、原野早知子弁護士と西川翔大弁護士より説明をしていただきました。労基研は、約1年間にわたって労働基準法改正について議論を重ねており、民法協でも学習会や意見交換を重ねてきました。民法協の意見は、労働組合に対するヒアリング結果を引用し、概要以下のような主張をしています。
①事業場ごとの労使合意によって、労働基準法が定める最低基準の適用を逸脱させること(報告書では「調整・代替」と表現)に、労働者はニーズを感じておらず、労働者を保護するための最低基準を労使合意によって取り払っていく方向での法改正は許されない。
②労働時間法制の個別課題として、テレワーク時のみなし労働時間制を導入することは、労働時間規制を緩和し、テレワーク時における長時間労働の危険性を防止できなくなるものであり許されない。
③副業・兼業における割増賃金の通算規定を除外する方向で取りまとめられている点は、長時間労働抑制の見地から反対であり、通算規定を維持すべきである。

以上のような内容を意見としてとりまとめ、政府関係機関や諸団体に送付し、ホームページ上で公表しました。https://www.minpokyo.org/statement/10679/
民法協では、引き続き、労働基準法制の在り方についての取り組みを継続していきたいと考えています。

4 特別報告

特別報告として、城塚健之弁護士より「非正規公務員立法提言について」、村田浩治弁護士より「スキマバイトについて」、それぞれ報告をしていただきました。

5 終わりに

全体会は、以上のように盛りだくさんの内容となり、一つ一つに時間をかけられなかったこと、質疑応答・討論に十分な時間を取ることができなかったことが課題です。限られた時間の中で、講演や報告を盛り込む難しさを感じるとともに、皆さんが集まって議論することの大切さを改めて感じました。来年以降も、開催のあり方を工夫しながら、参加者の皆さんが存分に議論できるような権利討論集会にしていけたらと思います。

                                                                  

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