弁護士 吉村 友香
11月2日、エル・おおさかにおいて、「どこに向かう?公共サービス~もっと市民の声を」をテーマに、「なくそう!官製ワーキングプア」第12回大阪集会が開催されました。今年は、大雨で悪天候の中での開催となりましたが、近畿6県以外からでは北海道・愛知、九州など、全国各地から、合計112名(内オンライン28名)の参加がありました。参加者も、当事者、労働組合、市民団体、国会議員、秘書、研究者、報道関係者、社労士、弁護士などさまざまで、運動の広がりを実感しました。
2020年4月1日に会計年度任用職員制度が始まって4年7ヶ月が過ぎ、この間、雇用の不安定さの増大、格差・貧困の拡大、公共サービスの質・維持に与える影響、ハラスメントの実態等、さまざまな問題点が明らかになりました。今年の集会でも、公務非正規の当事者が置かれている厳しい状況が報告されるとともに、このような状況に負けないで不安定雇用の理不尽さと闘う当事者の「闘いの現場から」の報告があり、会場全体が熱気につつまれました。
午前の3つの分科会では「会計年度任用職員制度 総ざらい」「委託・指定管理・民営化〜自治体は限界!」「非正規労働者なんでも交流会」に分かれて議論し、それぞれ現状の問題点を深め、今後の課題も明らかにしました。午後からの全体会も、盛りだくさんの内容でした。
パート1の「闘いの現場から」では、「市民に支えられて3年公募の闘いを」というテーマで、ハローワーク千葉の非正規公務員の方と市民の会の方からの報告がありました。市民の方からの「この人にはずっといてもらいたい」「これ以上、非正規公務員を増やさないで」という発言は切実なものでした。この他にも、当事者の方から、不公正な人事評価制度がパワハラや不当な雇い止めの温床になっているとの問題提起と、これに対する「泣き寝入りしない!公務災害の審査請求に立ち上がった」という力強い報告もありました。さらに、大阪自治労連関連評議会から、「勤勉手当正規同率支給をすべての自治体で勝ち取った大阪の統一した闘い」についての報告がありました。特別報告として、名古屋市職員労働組合から「現場からの20の告発、保育士1200人公募問題」について、図書館友の会全国連絡会から「図書館友の会の『全国図書館職員調査』からみえるもの」と題した報告がありました。全国の報告から、会計年度任用職員の問題は、非正規公務員の労働問題にとどまらず、私たち国民一人一人の生活に直結する身近な問題であるということを改めて認識することができました。
プログラムのパート2では、北海学園大学教授の川村雅則先生と官製ワーキングプア研究会の山下弘之氏から、会計年度任用職員の1年ごとの有期任用の法定化・公募問題と、大量離職通知書をめぐる情報公開結果について、お二方の掛け合い形式で特別報告がありました。報告の中での「実効性のある雇止め規制を実現するために、まずは民間非正規並みの待遇まで上げていく必要がある」という言葉は、公務非正規の方が置かれている現状の深刻さがよく分かり、非常に印象的でした。実効性のある雇止め規制を実現するためには、組合・当事者だけでなく、弁護士や研究者、議員、市民など様々な人が一緒になって運動を大きくしていく必要があると感じました。
プログラムのパート3では、アルバイト・派遣・パート非正規等労働組合から、非正規公務員の労働基本権が制約されていることについて、国際労働機関(ILO)が問題視していることやILOに訴え出たという取り組みについて報告があり、今後の運動への期待が高まりました。
プログラムの最後は、日韓の労働政策を比較する視点から、龍谷大学教授の安周永先生、龍谷大学名誉教授の脇田滋先生、中村和雄弁護士による非正規公務員の問題点についての意見交流がされ、労働運動と市民運動の連携の重要性と日本の今後の運動への期待を込めた激励の言葉もいただきました。盛りだくさんの、そしてとても濃い内容の素晴らしい集会でした。