民主法律時報

第69回定期総会のご報告

事務局長 藤井 恭子

2024年8月31日、第69回定期総会を開催した。台風10号が迷走しながら関西地方に接近する中、万が一の事態を考え、急遽、会場の設置を取りやめ、Zoom配信のみで開催する異例の事態となったが、最大86名にご参加いただいた。

記念講演では、立命館大学産業社会学部准教授の富永京子氏より「若年層に『頼っていい』と思わせる労働運動であるために」をテーマに、若者の労働組合・労働運動に対する意識や、活動家が息長く活動を続けるために持つべき視点などについて、講演をしていただいた。現代日本の若年層が「社会運動」に対して持っている忌避感の根本には、社会の個人化や将来の不透明さなど、この数十年で起きた社会構造の変化が大きく関連していることを、調査に基づく統計や、学生から出てきた実際の言葉を用いて非常に分かりやすくご説明いただいた。その上で、社会運動は個人の問題を社会化するためにあるのであり、「どんな困りごとであっても自己解決をしなければならない」「社会運動をしている人は偏っている、やばい人たち」と考えがちな若年層の考え方を変えさせるためにも、社会運動の手助けが必要と強調された。労働組合組織率が急速に低下し、若年層と労働運動の距離が遠くなっていることを、私たちは強く実感してきた。今回の富永氏の講演では、漠然と捉えていた若年層の意識について、非常に明快に言語化・数値化して示していただき、刺激を受けると同時に腑に落ちる思いがした。講演では、大きな課題だけではなく、例えば「職場にエアコンを付けて欲しい」といった些細な要求を実現することも、1つの「社会運動」の成果であり、このような小さな困りごとを共有し、解決させていくプロセスを積み重ねることが重要であると述べられた。そのためにも、組合には継続的な活動が求められると指摘された。重要な指摘であると同時に、派遣や「スキマバイト」など、現在の労働者(若年に限らず)は個々に分断され多様化しており、この点を乗り越えて共に要求を実現していく労働組合活動の難しさと重要性を感じた。一方で、労働組合員・活動家が、長く活動を続けていくためには、楽しく時には休む必要があることも指摘された。民法協の会員の皆さんには、心に置いて頂いて、これからの活動に活かしていただきたい。

後半は、2024年度の活動総括と今後一年間の活動方針について、事務局より報告した上で、労働法制、軍拡阻止・平和憲法改悪阻止運動、貧困と社会保障、大阪府政の問題といった民法協が取り組むべき課題について討議を行った。民法協が取り組むべき課題は多い。労働法制の課題の一つである「労働基準法改正」の動きについては、労働基準法が有する強行法規性を緩和させ、法による労働者保護を縮小させる危険性がある。政府は年内にも、法改正に向けた動きを加速させる可能性があり、スピード感をもって取り組む必要がある。また、アプリによる職業紹介「スキマバイト」の問題など、新しく生じてきた課題もある。会員の力を結集して、情勢に応じた取組みを進めていきたい。

今回の総会は、台風のため完全オンライン(Zoom)により開催した。権利討論集会・定期総会とも、会場を設けずオンラインのみで開催したのは、今回が初めての試みであった。大過なく総会を開催できたのは、事務局の皆さんの尽力があったのと同時に、コロナ禍でオンラインを活用する場面が急速に広がり、ツールとして一般化したことが大きい。総会そのものを中止することなくオンラインで開催できたことに、ネットワーク技術の恩恵を感じる。しかし、やはり会場で熱気を感じたかったという思いも強く残った。次年度は、是非とも会場に集まって、会員の皆さんと議論をしたいと思う。

2025年度も、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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