民主法律時報

在阪5団体共催 自由法曹団京都支部 先島諸島調査の報告

弁護士 藤 木 邦 顕

在阪法律家五団体の活動

大阪では、2016年安保法制に反対する運動以降、自由法曹団大阪支部、民主法律協会、青年法律家協会大阪支部、大阪社会文化法律センターと大阪弁護士九条の会が改憲阻止のための運動を共同するための協議を続けている。東京では、在阪五団体とは少し構成は違うが、同じく各団体の全国組織の共同行動があり、憲法審議会の状況は悪法反対運動についての意見交換と共同行動をしているが、地方での継続的な協議と企画をしているのは、大阪くらいであろう。

自由法曹団京都支部先島諸島調査

自由法曹団京都支部では、10年ごとに支部として国内・海外の視察旅行をしているとのことであった。20年前には韓国、10年前にはドイツ・スイスで原発とILO調査に行き、今年は60周年企画として、3月9日から14日の日程で石垣島・与那国島・宮古島の先島三島に行き、ここ8年来、自衛隊のミサイル部隊配備をめぐって住民運動が起こっている状況や基地周辺の実態を調査した。自由法曹団本部の常任幹事会でもその企画については、報告されていたが、大阪の法律家五団体として、中台紛争をめぐって自衛隊、特にこれまで配備のなかった陸上自衛隊のミサイル部隊が配備されていることの現状を知り、岸田政権の軍拡の最前線となっている先島諸島の住民はどう受け止めているのかについて、6月10日に弁護士会館+オンラインで企画した。

先島諸島の自衛隊配備状況と住民の声

自由法曹団京都支部の先島諸島調査の報告を、京都支部所属ながら弁護士法人の関係で大阪弁護士会所属となっている毛利崇(もうりそう)弁護士にお願いした。毛利弁護士は、日程に従って、石垣島・与那国島・宮古島の順に報告され、その概要は次のとおりである。

石垣島:人口約5万人で面積は大阪市程度、地対艦誘導弾部隊と地対空誘導弾部隊が配備される。2018年12月に市条例にもとづく自衛隊誘致の賛否を問う住民投票実施を求める署名活動が20歳台の若者から始まり、条例の要件を満たす署名が集まったが、市議会は住民投票実施を否決した。その後義務付け訴訟が起こされたが、2021年4月に最高裁が住民の訴えを退けた。その後も基地拡張をめぐって住民のたたかいが続いている。大阪から移住した藤井弁護士夫妻が地元の反対運動に力を入れている。
与那国島:人口約1700人で寝屋川市より少し大きな面積である。2015年に自衛隊誘致についての住民投票があり、賛成622票・反対445票で自衛隊配備が始まった。その時点では、ミサイル部隊の話はなかったが、現在地対空ミサイル部隊の配置と辺野古基地をしのぐ2200万㎥を掘削する大港湾計画が進められている。与那国島では、自衛隊配備をめぐる住民投票で住民が賛成派と反対派に分断される事態が生じ、あらたな住民運動の様子はあまりないとのことである。
宮古島:人口約5万人、堺市程度の面積がある。2016年に駐屯地のある集落が陸上自衛隊配備計画反対決議をあげ、市長や沖縄防衛局に申し入れをしたが、沖縄防衛局は、住民同意は不要であるとして、2020年以来第7高射特科群移転、地対艦ミサイル部隊配備を進めている。現在も根強い反対運動がある。

先島諸島と憲法

先島諸島は、その名の通り、日本の最西端の島々である。与那国島は那覇から508km、台湾西部からは111kmで台湾の方がはるかに近い。ここにミサイル配備をするのは、あきらかに台湾有事を想定している。特に宮古島への高射特科群の移転は岸田内閣の進める敵基地攻撃能力を保有することの具体的な表れとなる。台湾有事の際には攻撃目標になるのではないかという各島住民の不安はリアルなものである。その不安を解消する根本的な手立ては、中国と戦争など絶対にしないことであり、それは全国民の課題であると感じた。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP