民主法律時報

2024年度第3回労働相談懇談会 聞き取りと立証のポイント ~ハラスメント相談への対応part4~

おおさか労働センター 相談員 舛 田 佳 代 子

5月14日(火)、国労大阪会館で第3回労働相談学習会を開催し、ハラスメント相談への対応編第4弾として聞き取りと立証のポイントを学習しました。6産別・7地域・弁護士等から47名の参加があり、テーマへの関心の高さがうかがえました。主催者を代表して川辺和宏所長は「ハラスメントをどのように防ぐかという学習はしてきたが、実際に事件が起きた時にどう立証するかが大変難しい。しっかり学習したい」と挨拶しました。

労働裁判・労働委員会に見られる労働情勢の報告
民法協事務局次長の冨田真平弁護士(きづがわ共同法律事務所)が、3月4月の注目すべき裁判例と労災認定などを報告しました。海外赴任先(タイ)での過労自殺が労災と認定されたことや、テレワークでの長時間残業で適応障害を発症させたとして労災が認定されたケースが紹介されました。長距離トラック運転手の過労死で賠償を求めた訴訟では和解が成立。旧動燃の労組員5人が差別的取り扱いを受けていたとして、原子力研究機構に賠償を命じた判決、職種を限定して働く労働者に同意なき配置転換は違法と最高裁が初の判断を出したことなどが報告されました。

学習会「ハラスメントの基礎的な知識と聞き取りや立証のポイント」
化学一般・大王パッケージ支部のセクハラ・パワハラ事件の弁護団である垣岡彩英弁護士(堺オリーブ法律事務所)を講師に学習しました。事例を基にハラスメントの定義や類型が示された後、事業主が講ずるべき措置と行為者や使用者の責任が、指針や民法、労働契約法などを基に説明されました。その中では、使用者の措置義務の履行について、労働組合が調査や意見交換などで参画することの重要性が指摘されました。事実関係を把握する段階では、いつ・どこで・だれから・どのようなハラスメントを受けたかをしっかり聞き取り、時系列に記録すること。その際、出来事や服装、メールのやり取りなどから時期を特定する手法が紹介されました。

証拠収集では、客観的・物理的証拠として、日記やメモ、相談記録、目撃者から聞き取った記録、けがや病気の診断書などが挙げられ、録音は「違法ではなく証拠能力がある」と指摘。裁判では録音データの有効性を上げるために、前後も含めて文字に起こして証拠提出すると紹介されました。さらに労使交渉での書面のやり取りが使用者側供述の矛盾を突く証拠となると重要性を指摘されました。裏付け証拠がなくても「主張が具体的で合理的である場合」など被害者の主張する事実があったと認められる可能性が高い場合があると聞き、粘り強く闘うことが鍵になると感じる学習会となりました。

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