民主法律時報

4月開催「ブラック企業対策!労働判例ゼミ」

弁護士 片 桐 誠二郎

4月22日(月)午後6時から、「休職期間の満了と労働者の地位」をテーマとして、労働判例ゼミを開催いたしました。今回は、合計12名(現地5名+zoom7名)の方々にご参加いただきました。検討した裁判例及びその概要は次のとおりです。(括弧内は報告者。)

①綜企画設計事件(榧野寛俊弁護士)
建設設計技師の原告が、うつ病による休職後、「試し出勤」をしていたが、会社(被告)より休職期間満了に退職扱い及び解雇とする旨の通知を受けた事案。裁判所は、会社による解雇通知時点では休職原因は消滅していたと判断。

②カントラ事件(筆者)
貨物自動車の運転手として被告に雇用された原告が慢性腎不全による休職後、主治医らの診断をもとに復職を会社に求めたところ、会社が産業医の診断を根拠として復職を拒んだ事案。控訴審は、第1審と異なり、会社が産業医の判断を踏まえて運転手としての復職可能性を検討した結果、復職を認めなかったことは正当であると判断。

③日本通運(休職命令・退職)事件(青木克也弁護士)
物流事業全般を営む被告b事業所の営業係長であった原告が、ストレス反応性不安障害により休職し、休職期間満了により退職とされた事案 。裁判所は、休職命令及び休職期間満了を理由とする退職扱いはいずれも有効と判断。

裁判例①に関しては、試し期間中は最低賃金以上の賃金が支払われなければならないと判断した裁判例があることを確認しました。また、この点に関連して、理屈上はノーワーク・ノーペイだとしても、休職制度が労働者の復帰のための制度であることを踏まえると、休職期間中においても労働者の生活を保障するために何らかの対価を支給すべきではないかとの意見が出ました。

裁判例②に関しては、本件のような場合にはじめから軽作業への従事を申し出ることにはリスクもあるという指摘がありました。他方で、軽作業に復職した後も会社が従前の業務に戻さない場合には、職種限定の合意を踏まえて信義則上従前の業務に戻すべきとの主張が可能ではないかとの意見もありました。

③の裁判例については、労働者に職種限定の合意が窺われず、復職を申し出ていたにもかかわらず、 退職扱いの有効性の判断において片山組事件のような規範を明示せずに、労働者の言動に焦点を当てている点は、解雇権濫用規制の潜脱がうかがわれるとの指摘がありました。また、本件のような事例では、業務上疾病であることを理由に自然退職はできないとの主張を検討する余地があることを参加者間で確認しました。

次回、判例ゼミは6月17日(月)午後6時から開催いたします。次回も活発な議論ができればと思いますので、皆様のご参加をお待ちしております。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP