民主法律時報

裁判所と大手法律事務所の癒着や判検交流の課題を考える懇談会を開催しました

弁護士 清 水 亮 宏

 7月18日、「裁判所と大手法律事務所の癒着や判検交流の課題を考える懇談会」を開催しました。エル・おおさかで開催し、弁護士等18名が参加しました。

近年、2022年5月号の「経済」(新日本出版社)に、裁判所と大手法律事務所の癒着ともいうべき関係を指摘する後藤秀典氏の論文が登場し、注目を浴びていたほか、東京地裁の行政部の裁判長が異動により法務省訟務局長となったことが問題視されるなど、「司法の公平」が揺らぐ事態が生じていました。そこで、元裁判官・民法協会員の森野俊彦弁護士をお招きし、司法の公正を巡る様々な課題について議論・意見交換を行う懇談会を実施することになりました。

懇談会では、原野早知子弁護士によるインタビューを通じて、森野弁護士にお話しいただきました(具体的なお話もありましたが、本稿では抽象化して紹介いたします。)。

裁判官が訟務検事として国の代理人を務める判検交流に関しては、訟務検事経験後、(おそらくその経験を活かして)行政の責任を肯定する判決を出す裁判官がいる一方で、行政寄りの判断を続けていると評価されても仕方のない裁判官も存在するとのご指摘がありました。また、裁判官が外部の機関(民間企業や公正取引委員会等)で経験を積むことについては、外部機関の幅が広がっていることや、外部機関で経験を積むことの意義(「世間知らず」との批判を躱す等)についてご説明いただきました。さらに、裁判官の出世に関して、その実情や出世を巡る裁判官の心情についても分析・ご指摘がありました。

その後、増田尚弁護士から、先述の後藤論文の内容を紹介いただき、その上で癒着問題について議論しました。裁判官が退職後に大手法律事務所で弁護士登録をしたり、弁護士枠の最高裁判事が大手法律事務所に集中している点について、森野弁護士から、昔はあまり見られなかった現象ではないか、とのご指摘がありました。また、定年退官後の裁判官の再就職先の確保が課題になっているという背景事情についてもご説明いただきました。さらに、(先述の後藤論文においても言及されている)退官した元最高裁判事の弁護士が裁判所に意見書を提出したという問題については、法律上制限することが難しくとも意見書の作成という具体的な関与をすることについてはいかがなものか、とのご指摘がありました。

森野弁護士のお話の後、参加者から質問や意見が相次ぎ、大いに議論が盛り上がりました。司法の問題を民法協が正面から取り上げる機会はあまり多くありませんが、重要な裁判闘争に多数関わっている民法協でこのような機会を持つことは非常に重要であると感じました。

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