民主法律時報

裁判・府労委委員会例会「羽衣国際大学事件」裁判、学習会を開催

関西圏大学非常勤講師組合 江 尻   彰

2022年7月29日、エル・おおさかで「羽衣国際大学事件」の大阪地裁判決についての学習会を開催しました。本件は、羽衣国際大学の非常勤講師、専任講師として、通算約9年間勤務していた女性講師が、労契法18条1項の無期転換権を行使したところ、大学が、「大学教員任期法により無期転換権は発生していない」と主張して雇止めを強行した事件です。

学習会では初めに同訴訟代理人の西川翔大弁護士からこの間の経過報告がありました。2013年4月に無期転換ルール(労働契約法18条1項)が施行され、翌年の2014年4月に、その「特例」が作られ無期転換権の行使を5年から10年に延ばせる法改正がおこなわれました。原告の女性講師は2010年4月に同大学に「非常勤講師」として採用され、2013年4月には「専任講師」として3年契約を結びました。さらに2016年4月にこの契約が更新され2019年3月末までの3年間の契約を結びました。2018年 月に原告は通算5年を超えているので大学に無期転換の申し入れをおこないました。しかし、大学は無期転換を認めず、2019年3月末に雇止めになりました。講師は、学園に対して、無期雇用契約を前提とした労働契約上の地位確認等を求めて大阪地裁に提訴しました。しかし、2022年1月31日に大阪地裁は、「任期法」の立法趣旨・改正趣旨を十分に踏まえずに、原告の請求を棄却する不当判決を言い渡しました。

裁判の争点は原告が「任期法」5条1項の適用があるかどうかです。同法5条1項「先端的、学際的又は総合的な教育研究であることと・・・、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」とあり、原告の職務がそれに該当するかどうかです。大阪地裁判決は、原告が大学教員なので、一律的にそれに該当すると判断しています。これは明らかに「特例」の拡大解釈で不当なものです。また同法4条2項では「任期を定めて教員を任用する場合には、当該任用される者の同意を得なければならない。」とありますが、原告は大学から「任期法」が適用されるとの説明を受けていないし同意もしていません。任期付教員はすべて「任期法」が適用されることに合意しているという大阪地裁の判断は同法の趣旨に反するものです。また、文科省は各大学に「任期法」を適用する教員を採用する場合は「あらかじめ任期に関する規定を定めること」「当該任用される者の同意を得る」「書面による明示」などを通達しています。しかし、大学はそのどれも行っていません。しかし、大阪地裁判決は文科省の通達「同意」「説明」「了知」は法律上の要件ではないと切り捨てています。このような大阪地裁の不当判決に対し原告は、現在も大阪高裁に控訴し闘い続けています。

学習会では、大学が「任期法」の適用について原告に説明や両者で合意がなかったことの問題と「任期法」そのもの条文があいまいで問題があるなどの意見が出されました。

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