民主法律時報

大阪街宣懇 第10回総会開催のご報告

弁護士 高 橋 早 苗

2022年8月4日、街頭宣伝の自由確立をめざす大阪各界懇談会(大阪街宣懇)の第10回総会が開催されました。コロナの感染急拡大を受け、会場とZoomの併用で開催し、参加者は会場25名、Zoom14名で総勢39名の参加がありました。

本総会では、この1年の活動報告、今後の活動方針、役員体制の採択とあわせ、さっぽろ法律事務所の神保大地弁護士より「札幌地裁判決『ヤジ排除訴訟』に学ぶ」とのテーマで講演頂きました。同事件は、2019年7月の参院選挙中、札幌駅南口広場で当時自民党総裁の安倍晋三氏が街宣車上から応援演説中に、市民2名が「安倍やめろ」、「増税反対」などと発言したところ、警察官によってその場から排除され、1人はその後40分以上にわたり密着して付きまとわれるなどしたことにつき、北海道を訴えた国家賠償請求事件です。本年3月25日に言い渡された札幌地裁判決では、警察官らの行為を違法と認め、合計金88万円の支払いを認める判決が言い渡されました。

同判決は、警察官の行為が警職法4条・5条(被害者救出のために避難させる行為、加害者を止めるための行為)により正当化されるとの被告の主張を明確に否定し排除行為を違法と認定し、執ような付きまといの違法性も認めました。そして、原告らのヤジをいずれも「公共的・政治的事項に関する表現行為であることは論をまたない」として、原告らの表現の自由を警察官らが排除行為によって侵害したと認めました。神保弁護士からは、同判決は民主主義社会における表現の自由の重要性を明示した点において高く評価できるとの説明がありました。また、同事件については、いわゆるネット右翼を中心に、原告らのヤジが選挙の自由や街頭演説を聴く自由を侵害するものだとの批判がネット上でなされていたところ、判決の要旨の告知で、裁判長から「この判決を報道で知る人の中には、『原告らの行為は選挙の自由や街頭演説を聴く自由を侵害するのではないか』などと感じる方もおられるかもしれません。しかし本件では、被告ですらそのような主張はしていなかったところです。本日はマスコミの方々も傍聴されているので、この点はぜひ強調させていただきたく思います」とマスコミへの警鐘とネット右翼の批判に対する異例の言及があったとの報告もされました。この事件後、安倍元首相の銃撃事件が起こり、この札幌地裁判決による「委縮」が原因だという声も出ていますが、神保弁護士は、奈良県警は適法な警備をやらなかったという違いがあり、さらには萎縮したから適法な警備をしなかったなんて許されないと批判を一刀両断されました。

本判決によって、政治家の演説に対する抗議・批判が民主主義社会における重要な権利行使であることが明示されました。今後、不当に表現の自由を侵害されることなく自由に街頭宣伝等の活動を行っていく後押しになる画期的判決です。この判決を最大限活かして不当な圧力に屈することなく、今後も大いに街頭宣伝等の活動に取り組んで行きたいと思います。

また、開会挨拶で、国民救援会大阪府本部会長の篠原俊一弁護士より、国民救援会が35年ぶりに全面改訂した「100問100答」の紹介がありました。同冊子は、弾圧や干渉と闘う心得などをまとめたもので、街頭宣伝での警察官からの干渉、警察官の不当な捜査に対する対処、集会やデモでの注意点など、のびのびと社会活動・市民運動をすすめるための疑問に幅広く答えてくれるものとなっています。1冊500円、注文は国民救援会大阪府本部までお願いします。

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