弁護士 川 村 遼 平
「ブラック企業対策!労働判例研究ゼミ」は、ブラック企業への法的な対抗策を考えるため、偶数月の第3月曜日にゼミを開催し、テーマを決めて2~3の裁判例を検討しています。4月のゼミのテーマは、「解雇の基本・能力不足を理由とする解雇」です。
今回のゼミは、若手の弁護士を中心に、労働組合員・行政職員・記者など、幅広く18名の方にご参加いただきました。4月に弁護士登録をしたばかりの弁護士(74期)や司法修習生(75期)の方にもご参加いただき、活気あふれる会となりました。
今回のゼミでは、裁判例を検討する前に、冨田真平弁護士(きづがわ共同法律事務所・ 68期)から「解雇事件の相談対応について」と題してご講演いただきました。特に新人・若手の弁護士や労働組合員が不当解雇や雇止めに遭った労働者からの相談を受ける場面を想定して、聴きとるべきこと・助言すべきこと・注意を払うべきことについてポイントを絞って解説していただきました。解雇の有効・無効を判断するポイントだけではなく、会社が解雇を撤回して就労を指示してきた場合にどう対応するのか、収入がなくなってしまうという喫緊の課題にどう対処するのかといった実務的に難しい問題についても解説していただきました。
その後、冨田弁護士の解説を踏まえて、2つの裁判例の検討を行いました。1つ目の裁判例は、日本ヒューレット・パッカード(解雇)事件東京高裁判決(東京高判平成25年3月21日・労判1079号148頁)で、報告者は垣岡彩英弁護士(堺オリーブ法律事務所・73期)です。垣岡弁護士には、一審・控訴審の判断を紹介いただき、能力不足を理由とする解雇について東京高裁がどのような点を重視していたのか解説していただきました。労働者の敗訴事案なので、裁判例の問題点や、弁護士として主張立証にどういった工夫ができるのかといった点について、参加者同士で話し合いました。
2つ目の裁判例は、ブルームバーグPIP解雇事件東京高裁判決(東京高判平成25年4月24日・労判1074号75頁)で、報告者は松本亜土弁護士(関西合同法律事務所・74期)です。松本弁護士にも、一審・控訴審の判断を紹介いただき、1つ目の裁判例と同じく能力不足を理由とする解雇について東京高裁がどのような点を重視していたのかを解説していただきました。
次回6月20日のゼミについても民法協ML等でご案内しますので、ぜひご参加ください。