民主法律時報

「解雇の金銭解決」導入反対の取り組み

化学一般関西地方本部 書記長 海老原  新

 化学一般労働組合連合で2021年6月に取り組んだ「解雇の金銭解決制度導入反対署名」( 団体2343筆)にもとづき、2022年1月 日に厚生労働省に要請を行いました。

化学一般からは登藤中央委員長をはじめ8名が出席、厚生労働省からは労働関係法課から担当係長と課長補佐の2名が対応しました。

 要請内容は「解雇の金銭解決制度の法的検討会が導入ありきですすんでおり、検討会を中止し制度導入を断念すること」「金銭解決制度の設立よりも解雇規制の判例である『解雇四要件』を法制化し、不当解雇の規制を強化すること」です。

厚労省からの回答は、「労働紛争解決システムとして導入ありきではなく、法的論点の整理を行っているにすぎない。制度導入の是非は、労働政策審議会で労使関係者がいる場で検討されるべき。」「解雇四要件の法制化は、すでに労働契約法16条に解雇権の濫用が明記されており、今後の判例の動向も踏まえ引き続き検討していく。」というものでした。

これに対し、私たちは「検討会が労働者抜きで行われており、実態にそぐわない形で法的議論が行われている」ことを指摘し、「もともとの案では、使用者側にも金銭解決の申立が可能となっていた。」「会社が違法な解雇を行って職場に労働者を戻さないことが問題。低額な金銭となることも懸念される。」など、導入への危惧を述べました。

 厚労省はこの制度を「救済制度」と表現し、あくまで導入の是非は決まっておらず、金銭額の水準や基準も決まっていないという姿勢です。しかし一方で、今年度中の法的論点のとりまとめが指示されていると述べています。

仮に当初は労働者側の申立に限られていても、後に使用者側にも申立権が与えられることは過去の労働関連法制の改悪から明らかです。解決金銭額の基準が定まってしまえば、企業は「不当解雇による損失」を計算でき、気に入らない労働者や労働組合員をとりあえず解雇してしまうということも考えられます。

会社が違法な解雇を行い、労働者が苦労して裁判で解雇無効を勝ち取ったにもかかわらず職場復帰を困難にさせたり嫌がらせを繰り返すのも会社であるのに、制度によって「保護」されるのは会社となってしまいます。

労働者を「保護」するというのであれば、違法な解雇や人権侵害を許さず、労働者が戻りたくないというような職場をなくすことに時間と労力を使うべきです。要請の最後に、登藤委員長が「私たちは本人の意思に反した退職を認めない。賃金や労働条件は将来も含めて生活できるものを掲げている。違法な解雇を金銭で解決する制度は決して労働者保護にならない。制度導入に強く反対する。」と述べ、要請を終えました。

 厚生労働省の担当者は、何が何でも年度内にまとめることはしないと回答しましたが、早急な取りまとめの後に労働政策審議会にはかり、秋の臨時国会での提出も考えられます。厚生労働省としては労働者側から反対の意見を受けており、懸念事案についても認識していると述べています。今後、さらに大きな声を上げ、解雇の金銭解決制度の導入ではなく、明確なルールの確立や不当な解雇の規制強化を求める運動を広げていきましょう。

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