大阪争議団共闘会議 事務局長 小 林 隆 司
裁判・府労委委員会は2021年12月8日、エル・おおさかで例会を開催し、「NEC事件からみる不当な配転命令・懲戒解雇の効力」をテーマに議論しました。
この事件は、NECの関連会社「NECソリューションイノベータ(以下、会社)」が黒字経営であるにもかかわらず、「自家中毒」という持病等の病気を複数抱える小学生男児と高齢の母親の家族介護を一人で担っていた原告のAさん(56歳)の事情を配慮せず、人員整理を強行しました。11月29日、大阪地裁第5民事部(中山誠一裁判長)は原告の訴えを全て棄却する、不当判決を言い渡しました。
一審判決の詳細については、「民主法律時報」580号(2021年12月)にて弁護団の西川翔大弁護士より「判決報告」が掲載されていますので是非ご一読ください。
例会で、弁護団の鎌田幸夫弁護士は、原告側の証人申請など関係証拠を軽視した「中山コート」の姿勢を批判しました。また、判決で、Aさんが批判的な書面のメールを上司や役員に送っていたとされる会社側の主張を丸呑みした点についても「Aさんの『人格攻撃』ともとれるもので容認できない」と断じました。また、この事件は「単なる配転拒否問題ではない」と述べ、裁判所が事件の内容を丁寧にみていない現状に苦言を呈しました。
Aさんも「血も涙も無い判決だ。会社側の主張がまかり通るのは全く理解できない。特に中山裁判長の判断はひどすぎる。転勤命令に伴う不利益性について、まったく検討されていないといわざるを得ない。これでは『白内障を患う 歳の母親も東京に連れて行け! 自家中毒で息子さんも死なんやろ?』と言われたも同然だ。控訴審でも徹底的に闘います」と発言しました。
会場からは「こうした判断を下す大阪地裁の杜撰な有り様は決して許されない」という批判の声が多く上がりました。その一方で、法廷外闘争の一環で、マスコミ等のメディアが「ライフワークバランス(ワークライフバランスと称する意見も有り)」の視点でこの事件を捉え報道できるよう、運動を拡大するような提言もありました。
わたしたち大阪争議団共闘会議は、この事件に下された一審判決については非常に重大な懸念を持っています。今回の判決は、判事の感覚がわたしたちのそれと大きくかけ離れていることを改めて認識させられました。このことは大阪地裁5民で闘うわたしたち争議団だけでなく、多くの労組や支援共闘会議、そしてなによりも、「Aさん」の立場に追い込まれるかもしれない多くの市民のみなさんに、この判決の「問題点」を知っていただく必要があると感じています。
大阪争議団もこの場をお借りして、Aさんと共に争議解決まで徹底的に闘うことを改めて表明させていただきます。