弁護士 中西 基
2020年11月28日に労働法研究会がオンラインで開催されました。参加者は30名でした。
オンラインでの開催は前回に引き続いて2回目となります。コロナ禍において多人数が一堂に会することを避けるために、やむを得ず始めたオンライン開催ですが、遠方からでも参加しやすい、家庭生活と両立させやすいなどのメリットが大きいと感じました。膝をつき合わせた方が議論が深まるとのご意見もありますが、オンラインでの議論の仕方(機器操作や司会進行役の技量を含む)に習熟してくれば、十分に実りのある議論ができるのではないかと思います。
今回の労働法研究会のテーマは、「労組法上の使用者性」でした。
はじめに京都府立大学名誉教授である中島正雄会員から、従来の理論動向と問題状況を分かりやすく整理した基調報告をいただきました。朝日放送事件・最高裁判決の意義を再確認するとともに、この最高裁判決を曲解し、その射程範囲をねじ曲げていると言わざるを得ない中労委の判断基準(ショーワ事件・中労委平24・9・19、中国・九州地方整備局事件・中労委平24・11・21、パナソニックホームアプライアンス事件・中労委平25・2・6、日本電気硝子外一社事件・中労委平26・2・19)の問題点が指摘されました。
その後、会員が関与した最近の4つの事件(①堺・学童労組事件・大阪府労委平31・1・8、中労委令2・8・5、②全港湾日検事件・大阪府労委平31・2・12、③東リ事件・兵庫県労委平31・4・25、④朝日放送ラジオスタッフ事件・大阪府労委令2・2・3)について、各弁護団・当該労組から詳しい事件報告と労委命令の問題点などが報告されました。
①は、委託事業における受託者の変更にともない、旧受託者に雇用されていた労働者が新受託者に継続雇用を拒否されたという事案、②③④は偽装請負事案であり、②③は発注者への直用を要求した事案、④は発注者に雇用の保障を要求した事案です。
今回の報告と議論をお聞きして、25年前の朝日放送事件・最高裁判決の時代と比べて、派遣や委託などの間接雇用形態が広く蔓延している現代において、あらためて不当労働行為制度の目的に立ち返って、不当労働行為の主体と不当労働行為の形態を類型化しつつ、労組法7条の使用者性の判断基準を具体化・明確化する必要を強く感じました。また、具体的な事案においては、団交申入れ先の類型に応じて、団交要求事項をどのように工夫するのかも重要ではないかと感じました。
中島先生は、今年3月で京都府立大学を定年退官されました。研究会を企画した時点では、中島先生の慰労会をさせていただく予定だったのですが、コロナ禍で断念せざるをえませんでした。やはり慰労会はオンラインではなく対面でやりたいですね。