民主法律時報

「大阪教育集会2020~中学校教科書、ここが問題!」開催

弁護士 原野 早知子

 2020年は中学校教科書採択の年である。5年前、大阪府下では、大阪市を初め複数の自治体で育鵬社の歴史・公民の教科書が採択された。フジ住宅では、経営者が、従業員を大量動員し、教科書展示会で、育鵬社の採択を求める意見を書かせた(本年7月に原告勝訴判決が言い渡されたヘイトハラスメント事件にも大きく関わっている)。

教科書、特に、育鵬社の教科書にはどのような問題があるのだろうか。「子どもと教科書大阪ネット21」が6月6日に学習のための集会を開催した(エル・おおさか)。久々の「リアル」の集会に35人が集まった。

平井美津子さん(大阪ネット 事務局長)が基調報告を行い、育鵬社の歴史教科書について、他社と比較しながら、問題点を解説した。
・大日本帝国憲法と天皇制を賛美する。
・植民地政策を正当化し、日本が近代化を進めたとする。
・ 年戦争をアジア解放の戦争と位置付ける。
・日本国憲法は「押し付けられた」ものと否定的。
(ちなみに、育鵬社は、公民では、憲法について、人権の保障より「公共の福祉による制限」を強調し、人権についての正しい知識・感覚を持ちにくい。また、憲法改正へ誘導する記述となっている。)
・最後は中国・北朝鮮への敵愾心を煽り、「日本クール」を謳って締める。
「わが国は、過去の歴史を通じて、国民が一体感を持ち続け、勤勉で礼節を大事にしてきたため、さまざまな困難を克服し、世界でもめずらしい安全で豊かな国になりました。世界の中の大国である日本は、これからもすぐれた国民性を発揮して、国内の問題を解決するとともに、世界中の人々が平和で幸せに暮らしていけるよう国際貢献していくいことが求められています。」

教科書がこのようでは、生徒は特に近現代について認識を歪められ、近隣他国と対等に尊重し合って関係を築いていくことが出来なくなってしまう。

教科書の採択は、3月に検定結果発表、6~7月に教科書展示会、7~8月に各教育委員会にて採択というスケジュールで行われる。採択の対象となる教科書を見て検討できる期間がそもそも限られる上、教科書展示会は自治体毎に1カ所で期間を区切って行われるのみで、インターネットでの開示等は行われていない。義務教育の教科書であるのに、その採択について、市民の意見を反映する手続が乏しく、非常に非民主的である。民法協の加盟組合・団体を含め、採択があることも知らないうちに進んでしまうのが実情ではないか。

本年の採択に向けて、時間の余裕は無いものの、民法協として、情報を広げるとともに、育鵬社等の教科書の採択阻止に向けた取組が必要ではないだろうか。また、教科書採択に関わる手続の民主化についても、採択の年以外の時期を通じ、教科書ネット等と連携した活動を行っていくべきと考える。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP