民主法律時報

民法協 2020年新人学習会 報告

弁護士 西口 加史仁

1 2020年新人学習会の概要

2020年1月30日、大阪弁護士会で主に新人弁護士を対象に、学習会が開催されました。講師は谷真介弁護士で、新人弁護士3名に加えて、先輩弁護士や司法修習生、組合の方も参加していました。谷先生には、「労働者側の労働相談入門」というテーマで講義をしていただきました。具体的には、弁護士が労働者の方から法律相談を受けた際に注意すべき点、事情を聴きとる際のポイントなどを、谷先生の実体験を踏まえながら、横断的に解説をしていただきました。

2 労働相談の基本

以下、本学習会で学んだ、労働相談の基本について報告します。
(1) 近年、労働相談・事件の数は増加傾向にあります。
ところが、労働事件は、「会社」・「職場」という密室で行われており、証拠が偏在・不足すること、仕事という人の「生活」、「誇り」に関連する問題であること、圧倒的な立場の違いがあること等、固有の特徴があります。また、紛争解決の手段として、訴訟だけではなく、労働審判や行政による紛争解決等の様々なものが用意されています。このように、労働事件は比較的に特殊性を有しているといえます。

(2)
 そのような労働事件の特殊性から、労働相談においては、特有の注意点や取るべき姿勢があります。
例えば、労働者の業務内容等は様々であり、その業界の固有のルールや職場慣習等も様々であるため、我々が知らない・わからないことが多くあります。このような事情は、相談労働者から丁寧に事情聴取をしなければ、正確に把握することはできません。また、例えば、解雇・ハラスメントの相談だが、未払い残業代がある等、労働者が認識していない問題が隠れている場合もあります。更に、労働者の意向も様々であり、職場復帰を望むケースもあれば、金銭賠償を望むケースもあり、高い解決水準を望むケースもあれば、スピード感を望むケースもあるなど、事案ごとに多種多様です。
このように、聴取しなければならない事項が多岐にわたるため、労働相談では事情聴取にかなりの時間がかかる傾向にあります。しかし、これら基本的事実関係を丁寧かつ正確に把握することは、労働者が抱える問題を適切に解決に導くためには不可欠で、極めて重要です。

3 おわりに

本学習会では、労働相談について、基本事項から応用事項まで幅広く、谷先生の経験を交えた、大変有意義な解説をしていただき、新人弁護士にとっては、労働相談に関するこれ以上ない学習会となりました。民法協では、毎月各種の研究会が実施され、日々の業務にも大変参考になる議論がなされているとのことですので、私も積極的に学習会に参加し、研鑽していきたいと思います。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP