民主法律時報

森岡孝二先生追悼のつどい、 盛大に開かれる

弁護士 岩城  穣

 2018年8月1日、関西大学名誉教授で過労死問題の研究と救済・予防に巨大な足跡を遺された森岡孝二先生が急逝された。

当初はただ茫然と立ちすくむしかなかった私たちだったが、同年9月3日、森岡先生と関わりのあった有志の人たちに声をかけて追悼実行委員会を発足させ、①「追悼のつどい」の開催に向けた準備と②追悼記念誌の製作を開始した。

 追悼のつどいは2019年2月23日、「シティプラザ大阪」で開かれた。「旬の間」での第1部の追悼レセプションは、大阪過労死家族の会代表の小池江利さん、弁護士の清水亮宏さんの司会のもと、青木圭介さん(京都橘大学名誉教授)の心のこもった開会あいさつ、参加者全員による黙祷、森岡先生を振り返る20分間のビデオ上映に続いて、毎日新聞新潟支局長の東海林智さんが感動的な記念講演をしてくださった。

続いて、森岡先生が関わってきた主な団体や取り組みで共に活動した、10人の方々によるパネルディスカッションを、私がコーディネーターとなって行った。
(1)川人博(過労死弁護団全国連絡会議幹事長)
(2)寺西笑子(全国過労死を考える家族の会代表)
(3)村山誠(厚生労働省労働政策担当参事官)
(4)黒田兼一(過労死防止学会代表幹事)
(5)松丸正(大阪過労死問題連絡会)
(6)阪口徳雄(元株主オンブズマン事務局長)
(7)中谷武雄(基礎経済科学研究所理事長)
(8)大口耕吉郎(全大阪生活と健康を守る会連合会会長)
(9)川西玲子(NPO法人働き方ASU-NET副代表)
(10)森岡真史(森岡先生のご子息で立命館大学国際関係学部教授)

これらの錚々たる方々が、森岡先生の描いた未来はどのようなものだったか、私たちは何を引き継ぐかについて語ってくれた。時間の制約から、お一人5分程度のご報告であったが、それだけに大変濃密で感動的なものだった。特に最後の、森岡先生のご子息でもある森岡真史さんの発言は大きな感動を呼んだ。
最後に、私が閉会あいさつをさせていただいた。

第1部の参加者は332人にのぼった。全国からこれだけの人たちが集まり、森岡先生のこれまでの道のりと目指したものを共有し合えたことは、何よりも森岡先生への最大のはなむけになったと思う。また、森岡先生の奥様をはじめご家族、親戚の皆さんが多数参加してくださったことも、私たちにとって嬉しいことであった。

 続いて隣の「燦の間」で行われた、第2部の追悼レセプションにも205人の参加があった。全国過労死家族の会代表の寺西笑子さんと私の司会のもと、滋賀大学名誉教授の成瀬龍夫さんが献杯あいさつ。その後食事をしながらの歓談の後、①衆議院議員で「過労死防止を考える議員連盟」会長代行の泉健太さん、②連合労働局長の村上陽子さん、③全労連副議長の橋口紀塩さん、④全労協事務局長の中岡基明さん、⑤わざわざ韓国からお越しくださった韓国過労死予防センター理事長のイム・サンヒョクさん(通訳は呉民淑(オ・ミンスク)さん)、⑥兵庫過労死家族の会の西垣迪世さん、⑦NPO法人POSSE代表の今野晴貴さん、MBSディレクターの奥田雅治さんが次々と心のこもったスピーチをしてくださった。

次に、森岡先生の娘婿で、全盲の落語家である桂福点さんが「孝二おじいちゃんの思い出」と題して、紙芝居も使いながら楽しい落語を披露してくださった。

スピーチの後半では、①民法協会長の萬井隆令先生、②金沢大学名誉教授の伍賀一道先生、③関西大学の森岡ゼミ卒業生で現在は高校教員をしている鳥羽厚史さん、④経済理論学会の八木紀一郎先生、最後に⑤和光大学教授の竹信三恵子先生が次々と登場した。

続いて、上出恭子弁護士の音頭で、参加者全員で「We shall overcome」を歌った。第2部最後の閉会あいさつは、龍谷大学名誉教授の脇田滋先生が締めてくださった。

 この日参加者に配布された追悼記念誌「森岡孝二の描いた未来 私たちは何を引き継ぐか」(全148ページ)は、合計116人に及ぶ方々の追悼文の、その一つひとつが森岡先生のあゆみとお人柄の記録となっている。記念誌の末尾には、森岡先生のご経歴、膨大な研究業績や著作、NPO法人働き方ASU-NETのホームページに連載した348に及ぶエッセイのタイトル一覧、森岡先生の活動を紹介した新聞記事、思い出の写真などを、不十分ではあるがまとめることができた。この冊子は、残された私たちにとって、またこれから働き方や日本の企業社会のあり方を考えたいと思う人たちが森岡先生をひもとく上で、大きな資料的価値があると思う。なお、この記念誌は若干の余部があるので、1冊1000円でお分けしています。申し込みはいわき総合法律事務所(06-6364-3300)まで。

 また、同じくこの日、森岡先生が構想していた新著「雇用身分社会の出現と労働時間 過労死を生む現代日本の病巣」が、桜井書店から発刊された。

森岡先生がパソコンに残していた原稿などのご提供をご遺族から受け、あとがきを森岡真史さんが書かれた、文字どおり森岡先生の遺著である。死してなお本を遺すというのはそうできることではない。最後の最後まで森岡先生らしい締めくくり方だと思う。

 森岡先生のご遺族からのご報告によれば、森岡先生が75歳の誕生日を迎えるはずであった3月23日、森岡先生の遺骨の一部を、森岡先生が愛してやまなかった小豆島の海に散骨したとのことである。森岡先生のご冥福をお祈りするとともに、先生の遺志を引き継いで、多くの方々と力を合わせて進んでいきたい。

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