弁護士 清水 亮宏
1 2019年1月の判例ゼミ
2019年1月24日18時30分から、民法協事務所でブラック企業対策! 判例ゼミを開催しました。修習生や新人弁護士の方に多数ご参加いただきました。
今回のテーマは「パワハラ(業務指導の必要性との関係)」です。
2018年は様々な業界でハラスメントが話題となり、ニュース等で頻繁に取り上げられました。法制化に向けた議論も進められているところです。もっとも、どのような場合にパワハラに該当するかついては明確な基準がなく、パワハラであるか否か(違法であるか否か)が争われることが多々あります。その中でも、使用者側から、〝業務指導の必要性があったため、ある程度厳しい指導はやむを得ない〟などの主張がなされることが珍しくありません。そこで今回は、業務指導の必要性との関係について取り上げることにしました。
2 検討した判例・裁判例
まず、PE&HR事件(東京地判平成18年11月10日 労判931号65頁)について、新人の西川翔大弁護士から報告いただきました。「泥棒と同じことをしている」「人間として最低」などの代表者の発言について、言動に多少比喩的あるいはきつい表現が見られると判断しながらも、会社の利潤追求目標・組織の在り方・被害者の業務処理状況等を考慮し、違法性を否定した裁判例です。
続いて、同じく新人の足立敦史弁護士から、前田道路事件(高松高判平成21年4月23日 労判990号134頁)について報告いただきました。被害者が落ち込んだ様子を見せるほど強い叱責があったものの、ある程度の厳しい改善指導をすることは、上司らのなすべき正当な業務の範囲内であるとして、違法性を否定した裁判例です。
最後に、冨田真平弁護士から、U銀行事件(岡山地判平成24年4月19日 労判1051号28頁)について報告いただきました。被害者自身の問題(ミスや業務遂行能力等)を指摘しつつも、叱責が精神的に厳しく被害者の体調にも無配慮であったことを理由に違法性を認めた裁判例です。
参加者からは、業務上の必要性を理由に違法性を否定すること自体に異論を唱えていくべき、パワハラの該当性について可能な限り基準を明確化していくべきなどの意見が出され、活発な議論が生まれました。
3 さいごに
次回の判例ゼミは2019年3月28日(木)18時30分~@民法協事務所です。テーマは「休職・復職」です。ぜひご参加ください!