全大阪消費者団体連絡会 事務局長 飯田 秀男
6月2日、「ほんまにええの? TPP大阪ネットワーク」は、鈴木宣弘東京大学大学院教授を講師に学習会を開催した。鈴木氏は、TPP(環太平洋連携協定)が国民生活に及ぼす影響を縦横に語って警鐘を乱打し、「強い覚悟をもってTPP を止める」運動が求められていると強調された。以下はその大要。
TPPの本質はグローバル企業への便宜供与
鈴木氏は、TPPの本質は、グローバル企業が儲けられるルールをアジア・太平洋地域に広げようとする「お友達」への便宜供与であると指摘。米国大統領選挙では、「TPPで儲かるのはグローバル企業の経営陣だけで、賃金は下がり、失業が増え、国家主権が侵害され、食の安全が脅かされる」とのTPP反対の米国民の声は世論調査で78%に達した。日本政府は、「なぜ米国民にTPPが否定されたのか」について冷静に本質的な議論をしていない。日米のグローバル企業のためにTPP11(米国抜きのTPP)を推進し、TPP型の協定を「TPPプラス」(TPP以上)にして、日欧EPA(経済連携協定)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)にも広げようとする日本政府の異常さを国民も気づくべきである。
「3だけ主義」で儲けるグローバル企業
国家戦略特区に象徴される規制緩和は、ルールを破って特定企業に便宜供与する国家私物化であり、TPP型協定に象徴される自由貿易は、国境を越えたグローバル企業への便宜供与であって世界の私物化である。つまり、自由貿易=グローバル企業が自由に儲けられる貿易であり、グローバル企業の経営陣は、命、健康、環境を守るコストを徹底的に切り詰めて、「今だけ、金だけ、自分だけ」(3だけ主義)で儲けようとする。投資・サービスの自由化で人々を安く働かせ、命、健康、環境への配慮を求められてもISDS(投資家対国家紛争解決)条項で阻止し、新薬など特許の保護は強化して人の命よりも企業利益を増やそうとする。利権で結ばれて、彼らと政治、メディア、研究者が一体化する。これが規制改革、自由貿易の本質である。
食と暮らしの共助・共生システムへ
3だけ主義の対極に位置するのが食と暮らしを核にした共助・共生システムである。一部に利益が集中しないように相互扶助で農家や地域住民の利益・権利を守り、命・健康、資源・環境、暮らしを守る共同体(農協、漁協、生協、労組など)は、「3だけ主義」にとっては存在を否定すべき障害物である。そこで、「既得権益」「岩盤規制」と攻撃し、ドリルで壊して市場を奪い、自らの既得権益にして私腹を肥やそうとする。例えば、郵貯マネーに続き、貯金・共済のJAマネーもほしい米国ウォール街は、農協改革を日本政府に要求する。私たちはこうした策略に負けるわけにはいかない。
今、覚悟を持った運動が求められている。