民主法律時報

過労死防止大阪センターシンポに参加

弁護士 須井 康雄

2018年4月20日エルおおさか本館視聴覚室で表記のシンポが開催された。
過労死防止大阪センターは、2014年の過労死等防止対策推進法の成立・施行を受け、2015年3月13日に発足し、大阪で過労死等の防止と救済に取り組むことを目的としている。

シンポの冒頭、当協会の会員でもある松丸正センター代表幹事と来賓の綿貫直大阪労働局労働基準部監督課課長より挨拶があった。

その後、大和田敢太滋賀大学名誉教授より「過労死と職場のハラスメント」という演題でご講演があった。大和田先生は、ハラスメントの類型が30種類以上ある現状では、被害者側がハラスメントの類型を立証しなければならないため、包括的なハラスメントの定義が必要だとされた。また、日本に特徴的な業務型ハラスメント(長時間労働、過重なノルマ、指導研修、懲罰的労働など)では、加害者側も被害者も、業務という形をとるがゆえに、ハラスメントであることを自覚しにくいため、当事者の心がけの取組だけに終わらせず、仕事配分のあいまいさや不均衡是正といった労働組織の問題点にまで踏み込んだ対策・規制が必要だと指摘した。なお、さらに詳しく知りたい方は、2月に出版されたばかりの大和田先生著「職場のハラスメント なぜ起こり、どう対処すべきか」(中公新書)をご覧ください。

その後、棗一郎日本労働弁護団幹事長より働き方改革をめぐる国会情勢の報告があり、続いて、当協会の会員でもある岩城穣弁護士から、過労死防止法と大綱の改正課題について報告があった。過労死防止法では、施行後3年をめどとして必要な措置を講じることとされている。岩城弁護士は、労働時間を正確に把握し、残業代をきちんと払うことが精神的なストレスの減少につながることが国の調査で明らかになったことや、今後、自動車運転業務、教員、ITなど重点業種について調査が行われること、国に対して、労働時間の適正把握、ハラスメント対策の法制化などの意見を出していくと報告した。

最後に、過労自死で息子さんを亡くされたご遺族の訴えがあり、過労死等をなくすためさらに活動を発展させていくことを確認し、シンポは幕を閉じた。

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