民主法律時報

衆院選アンケートを実施

事務局長・弁護士 須井 康雄

 2017年10月に行われた衆議院選挙に際し、民法協では近畿に比例候補者のある各政党と大阪選挙区の候補者に対し、労働法制に関するアンケートを行った。

アンケートの実施には2つの理由があった。1つは、安倍総理が、唐突に北朝鮮情勢を「国難」として衆議院を解散したが、労働者の生命・健康・財産を侵害する危険の大きい残業代ゼロ制度などの導入について、有権者に争点として十分に示されているとはいえなかったこと、もう1つは、希望の党の誕生を機に始まった民進党の事実上の分裂、排除された議員による立憲民主党の設立という野党勢力の大変動の中、野党についても労働法制に対するスタンスが不明となってしまったことであった。

政党に対するアンケートは、自民、公明、共産、立憲民主、社民から回答があり、希望、維新は回答がなかった。候補者に対するアンケートは、24名(自民1、公明1、共産13、立憲民主5、維新1、社民1、無所属2)から回答があった。

アンケートの結果は、次のとおりであった。私たちが「残業代ゼロ制度」として批判する高度プロフェッショナル制度、裁量労働制拡大について、自民が賛成、立憲民主、共産、社民が反対というのは予想どおりであったが、公明党が「どちらともいえない」との態度であった。

残業時間の上限規制は回答を寄せたすべての政党が賛成したが、100時間の例外に反対したのは、立憲民主、共産、社民だった。解雇の金銭解決については、自民も公明もどちらともいえないとの回答で、立憲民主、共産、社民は反対だった。

外国人労働者の増加について、自民、公明は賛成、共産、立憲民主、社民はどちらともいえないとの回答であった。

最低賃金を1000円にすることについては、回答のあった自民、公明、共産、立憲民主、社民すべての政党が賛成だったが、自由記載欄のコメントによると、自民、公明は全国加重平均(地域差を前提)、共産、立憲民主は全国一律という違いが出た。

アンケート結果は民法協のHPで公表し、各種MLで告知し、マスコミ、労働団体に送付した。アンケート結果は、新聞報道等はなかったが、ツイッターやフェイスブックで会員や労働組合により拡散された。「希望の党が無回答」という文脈でのツイートが最も多くの人に広がった。また、選挙区ごとの候補者の回答の表をツイッターで広めてくださった方もいた。

アンケートを実施した意義として、政党のスタンスがある程度、明らかになったという本来の意義に加え、私たちにとって予想された回答でも、アンケート結果という形で視覚化することにより、容易に多くの人に情報が広がっていくという意義もあった。
今後も、時期やテーマに応じてアンケートを実施し、立法部門への働きかけや市民への訴えに活用することを検討していきたい。

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