弁護士 西 田 陽 子
1 はじめに
2017年9月、非正規労働者の権利実現全国会議(代表:脇田滋元龍谷大学教授、事務局長:村田浩治弁護士)が主体となり、インターネット上で派遣労働者に対しアンケートを行い、無料で有志の弁護士や学者が法律相談に答える「派遣ネット相談」(URL:http://www.hiseiki.jp/haken2018/)が始まりました。今回は、派遣ネット相談を立ち上げるきっかけとなった派遣法改正に関する諸問題や、現在の運用状況につき御報告いたします。
2 改正派遣法の問題点と派遣労働実態把握の重要性
2015年9月、改正派遣法が施行され、企業が永続的に派遣労働者を使い続けることができる一方で、個々の派遣労働者の方が同一の企業(の同一の組織)で働けるのは最大3年までとなりました。
2018年10月には、改正派遣法の施行から3年を迎えます。上記の改正により、2015年10月以降に新たに契約を締結した派遣労働者の方は、原則として3年を超えて現在の職場で継続して働くことができなくなり、職を失う危険があります。他方、2015年10月1日から、派遣労働者の方が、同じ職場で3年を超えて働いている場合等に、派遣先に直接雇用を求めることができる制度(直接雇用の申込みみなし制度)も施行されました。しかしながら、派遣労働者の方が自らこれらの法改正から生じうる問題に対応することは困難です。
このような状況の中、派遣労働者の方の労働実態を調査するアンケート及び法律相談を行い、実情を把握することが違法行為の防止にとって重要であると考えられ、「派遣ネット相談」が開始されることとなりました。
3 現在の運用状況
現在、民法協会員をはじめとする有志の弁護士が2人1組となってローテーションを組み、上記URLの回答フォームに入力された御相談に対応しています。回答は相談から1週間以内を目標に行われており、回答担当弁護士だけではなく、その他の弁護士及び学者によって、全体のメーリングリストにおいて検討される等、質の高いものとなっています。2017年10月5日現在までに、3件の相談に対して回答がなされました。
4 今後について
以上のとおり、なるべく多くのアンケート結果及び法律相談を集積して派遣労働者の方の労働実態を把握し、違法行為を防止する必要がありますが、まだまだこのような有益な活動がなされていることは十分に認知されていません。今後メンバー一同さらなる広報活動に力を入れていくとともに、民法協会員の皆様におかれましては、「派遣ネット相談」の周知に御協力いただきたくお願い申し上げます。